転倒転落対策の考え方

  • 転倒転落対策を考える際には、患者状況を含めた組織全体を捉えることが大切です。
    RoomT2では、医療の質の評価の考え方をふまえ、
    ストラクチャー・プロセス・アウトカムの3つの側面を考慮することを提案します。

    医療の質は3つの側面での評価が
    必要と言われています

    ①ストラクチャー
    物的あるいは人的資源(人材、設備、備品の配置など)
    ②プロセス
    医療従事者の態度や行動、行為
    ③アウトカム
    医療や看護の結果としての患者の健康状態、満足度、QOL

    ※1980年にアメリカのアベティス・ドナベディアンが提唱

    RoomT2では、
    転倒転落対策もこの3つを考慮することが大切だと考えています。

    患者の尊厳を守りながら、転倒転落による傷害をゼロにする!
    患者の尊厳を守りながら、転倒転落による傷害をゼロにする!

    ドナベディアン・モデルとは?

    医療の質は「ストラクチャー(構造)」「プロセス(過程)」「アウトカム(結果)」という3つの側面から評価できるとされています(1980年にアメリカのAvedis Donabedianが提唱)。これを「ドナベディアン・モデル」といいます。「ストラクチャー」とは医療システムがもつ能力(人材、設備、備品の配置など、物的あるいは人的資源)、「プロセス」とはどのように医療が提供されたか(医療者と患者間の相互作用、医療者の態度や行動、行為など)、「アウトカム」とは提供された医療に起因する変化(医療や看護の結果としての患者の健康状態、満足度、QOLなど)のことを指しています。

    現場では、「プロセス(どういう介入をしたか)」や「アウトカム(その結果、転倒・転落発生率はどうだったのか)」に注目しがちですが、その前提となる「ストラクチャー(どういう物的/人的資源を整えたのか)」を考えることが重要であり、ソフトとハード両面からのアプローチが必要です。患者状況を含めた組織全体を考えることが何よりも大切であると考える理由はここにあります。


    転倒転落対策に終わりはない

    転倒転落対策において、前項では「ストラクチャー」「プロセス」「アウトカム」の3つの側面を網羅的に考慮することが大切であることを説明しましたが、それらを理解するだけでは転倒転落対策は進みません。次に必要となってくるのは、PDCA(Plan-Do-Check-Action)による転倒転落対策の運用(PDCAサイクルを回すこと)です。PDCAサイクルについては、業務改善プロセスの手法の一つとして、看護師の皆さまにも馴染みがあるかと思います。現状を分析・把握し、どのように改善していくかについて目標を立てて実行計画を作り(Plan)、計画に基づき対策を実行してみます(Do)。計画で定めた期間が経過した後、計画通りに実行できたのか、実行した対策やその結果を評価し(Check)、計画に沿っていない事項がある場合、あるいは、成果が出ていない場合には、さらなる対策を検討し(Action)、次のPlanへとつなげていきます。

    ポイントとして、とくにCheckに際しては、転倒転落発生率がどうだったのかなど「アウトカム」にのみ注目しがちですが、「ストラクチャー」や「プロセス」についてもしっかりとCheckし、“抜け・漏れ”なく改善していくことがとても大切です。また、それ以上に大切なことは、このPDCA サイクルを「回し続ける」ことです(PDCA“サイクル”と呼ばれる所以)。PDCAサイクルは、業務改善のプロセスとしてとても有効なフレームワークですが、すぐに効果が出る/成功するとは限りません。PDCAサイクルは、そのようなときにこそ威力を発揮するフレームワークです。何度も実行し、何度も改善された計画を繰り返していくことで、徐々にありたい状態に近づけていくことができます(=PDCAサイクルのスパイラルアップ)。最初から大きなPDCAサイクルを回そうとするのではなく、小さなPDCAサイクルを回し続けていくことが、ありたい状態に向かうための近道であるといえるかもしれません。

  • PLAN

    :現状を把握し、目標を立て、実行計画を作る

    ①ストラクチャー

    • 人材の最適配置
    • 医療安全管理室の設置
    • 転倒転落対策の組織作り
    • 病棟、病床の設備環境の整備
    • ベッドや備品等の整備
    • 離床センサーや通知システムの整備

    ②プロセス

    • 機器やシステムの運用ルールの策定
    • アセスメント方法の策定
    • アセスメント時期、頻度のルール策定
    • 転倒転落発生時の報告ルール策定
    • 転倒転落対策を標準化する
    • 多職種間の情報共有のルール策定
    • 研修や勉強会の実施計画の策定

    ③アウトカム

    • 結果を評価するための指標の決定
    • 指標を導出する手順の決定

    DO

    :計画に基づき対策を実行する

    CHECK

    :実行した対策やその結果を評価する

    ①ストラクチャー

    • ヒト、モノが充足しているか
    • ヒト、モノが適切に配置されているか
    評価はアウトカムだけに
    注目しがちですが、
    ストラクチャー
    プロセスについても
    確認しましょう。

    ②プロセス

    • アセスメントや記録が手順通りに実施されたか
    • 転倒転落発生時の報告が適切にされたか
    • 多職種での情報共有がルール通りできたか
    • 研修や勉強会が計画通りに実施されたか

    ③アウトカム

    • 対策した結果が出たか
      (転倒転落に関する指標を確認)

    ACTION

    :さらなる対策を検討し、次のPLANへ