転倒転落対策Q&A

このページに掲載されている回答は、RoomT2としての見解・考え方であり、必ずしも状況の改善をお約束するものではございません。予めご了承ください。

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転倒転落対策への
取り組み方(ソフト面)に関するQ&A

取り組み方
一年の成果の振り返りをして来年度の計画をまとめているのですが、来年度につなげるためのポイントを教えてください。

1)しっかりと立ち止まる:
転倒転落の問題を解決する取り組みは特定の区切りがありませんから、まさにこのタイミングでしっかりと立ち止まり、過去一年を振り返ることがこれからの頑張りを成果につなげるために重要です。忙しいとは思いますが、だからこそ自分自身で時間を十分に確保してください。

2)「何をしたのか」ではなく「どんな成果があがったか」を評価する:
振り返りはどうしても「何をしたのか」つまり「何を頑張ってきたのか」を成果のように捉えてしまいます。振り返るべきなのは、「問題は減ったのか、無くなったのか」「問題が起きるリスクは減ったのか、無くなったのか」です。成果は出たのか、色々とやったけれども、成果になっていないのか、まずはこれをはっきりさせてください。

3)「成果があがった」ならさらに次を考える、「あがらなかった」なら全面的に目標と計画を見直す:
成果が十分に出たのならばこの一年はとてもいい一年だったということです。せっかく成果が出たので、ここで目標をもう一段階高いところにセットし、そのための達成計画を新たに考えます。情報を集めることが鍵です。一方、十分な成果が出なかったならば、「考え直す」ことが必要です。目標に具体性が足りなかったのかもしれません。目標を達成する方法が十分でなかったのかもしれません。「少し書き換えて、来年また頑張る」ではなく、是非内容を全面的に見直してみてください。よっぽどさぼっていたなら別ですが、「頑張らなければ」と思っているだけだと、全てが漠然としてしまい同じことを繰り返すことになってしまいます。

(RoomT2マネジメントスキルアドバイザー 高田誠)

▶︎問題解決へのアプローチ「①目標の立て方」

目標を明確にした後の戦略、計画はどのように立てていけばよいでしょうか?

「戦略」とは、達成するための「発想」・「アイデア」のことです。「目標」が達成できない状態が続くと、私たちはどうしても無意識のうちに「もっと頑張らなければ」と思ってしまいます。しかしながら、今までも頑張っていたはずですから、同じことを繰り返すだけでは、今まで達成できなかった目標は達成できないでしょう。今までとは違うこと、何か新しい「発想」・「アイデア」を取り入れること、それが目標を達成するためには、より重要なことです。新しいことと言っても、何も無いところからは新しいことを考えつくことはできません。
ポイントは情報を集めることです。転倒転落については、多くの人が様々な工夫をして取り組んでいます。外に目を向ければ、今の自分にはない「発想」・「アイデア」が必ずどこかにあります。業務の中で接点がある人達からの情報はもちろん、RoomT2サイトにも様々な情報があります。そこにある例がそのまま全部当てはめられるとは限りませんが、部分的に取り入れられることはいろいろとあるはずです。是非、情報を集めることに力を入れてみてください。これからの目標管理の達成計画が今までとは全く違うものになります。

(RoomT2マネジメントスキルアドバイザー 高田誠)

▶︎問題解決へのアプローチ「②戦略の立て方」

目標の立て方について教えてください。

どんな仕事でも同じですが、特に転倒転落の問題解決は目標を明確にすることが重要です。目標が明確でないと、活動がばらばらになったり、今までやってきたことを漠然と続けるだけになってしまったりと、成果を出すことができないからです。目標というとノルマのようで気が重いと思いますが、目標を立てる本当の目的は、自分の頑張りを成果にするためです。「成果をあげるための目標」を決めるとなると、「ここに行きつきたい」「本当はこうありたい」と高い目標を決めることが重要です。「このくらいできそうだ」で目標を考えてしまうと、やることが今まで通りのものになってしまい、今ある問題は解決できないからです。

しかしながら、転倒転落のように様々な問題が混ざっている場合、簡単に高い目標として「全てゼロ」といっても漠然としてしまい目標として機能しません。考え方のコツは、「どの問題を無くしたいのか」を決めることです。問題を絞ることで、そこに集中し、今までは取り組んでいなかったこと、不十分だったことも見えてきます。どの問題に絞るのかというと、一番無くしたい問題です。「出来ることを無くす」ではなくて、成果をあげる高い目標として、「無くすべきことを無くす」です。例えば、患者さんへの影響が大きいこと、明らかに自分たちの力で解決できるはずのこと、繰り返し起こっていること、などです。簡単なことではないでしょうが、問題を絞ってそのために頑張れば、高い目標でも必ず成果を出すことができます。自分の頑張りを成果にするために、是非、一度、しっかりと立ち止まって目標を明確にすることに力を入れてみてください。

(RoomT2マネジメントスキルアドバイザー 高田誠)

▶︎問題解決へのアプローチ「①目標の立て方」

転倒転落対策におけるそもそもの考え方、進めていく方向性がよくわかっていないので教えてください。

RoomT2は転倒転落に対するあるべき姿として、5つの目標を掲げています。
①転倒転落による傷害をゼロにする
②患者の尊厳を守る
③ADLを維持し、自立を支援する
④患者・家族が納得し、安心できる
⑤組織としての効率性を高める
現場の方々にもこれらを指針にしながら対策を進めていただくことを提案しています。
▶︎転倒転落に対するあるべき姿

また、患者を含めた組織全体をとらえて対策を立てるために、医療の質の3つの側面(ストラクチャ―、プロセス、アウトカム)で評価することをお勧めします。
▶︎転倒転落対策の考え方

上記コンテンツが掲載された冊子は下記よりお申し込みが可能です(無料)。
▶︎転倒転落対策資料のお申込み

その他、医療安全の基本的考え方や取り組み方など、管理者の方に役立つ動画コンテンツも是非ご確認ください。
▶︎動画で見る転倒転落

転倒転落対策について継続的に情報収集したい方は、月1回お届けしているメールマガジンも是非ご活用ください。
▶︎RoomT2メールマガジンのお申込み

目標を立てる上で、よい目標というのはありますか?

よい目標を設定すると、成果につながりやすくなります。下記に、よい目標の5条件を挙げますが、詳細はリンク先でご確認ください。今後目標を立てるときには、よい目標の5条件を満たしているか見直してみてください。
①魂がこもっていて、自分がやる気になっている
②重要なことを扱ってる
③高いところを目指している
④目指す状態を具体的で明確に描いている
⑤シンプルでわかりやすい

▶︎よい目標の5条件

やることをしっかり決めて頑張っているのに、なかなか成果が出ないのですが・・・

転倒転落防止に向けた取り組みにおいて成果を上げていくためには、目標設定がとても重要です。そして、目標を立てるうえで、よく陥りがちなのが「やること」を目標としてしまうことです。やることを決めてその作業を完了したとしても、もともと考えていた本来の目標を達成できるとは限りません。「作業をすることにコミットする」のではなく、「目標にコミット」する、という考え方を意識すると良いでしょう。「やること」を決めるのではなく、何がどんな状態になっているべきなのかという「目標」を明確にしましょう。そのうえで、それを達成するための戦略を丁寧に掘り下げて考えていく必要があります。

▶︎目標管理のお悩み解決

急性期病院で、日々忙しい中で患者さんの状態が変わりやすいです。 そんな中で前例踏襲の転倒転落対策を継続してしまっていたり、事故が起こってから、再アセスメントしたりというのが現状です。どのように対策を立てたら良いのでしょうか。

転倒転落の実態が貴院においてはどうであるのか、詳細についてデータ化してみましょう。そのことと、現在行っている対策について対比してみて下さい。必要な対策が必要なときに実施されているのかどうかの検証です。アセスメントのタイミングもズレたりしていませんか。患者ケアのプロセスの中での転倒転落対策がしっかりと根づいているでしょうか。
RoomT2でご紹介している「問題解決へのアプローチ」も参考にしていただき、ありたい状態を設定したうえで戦略的に事故対策を行うことをお勧めいたします。

▶︎問題解決へのアプローチ

転倒転落マニュアルの改訂を考えています。マニュアルを作成するにあたり、必要な内容や注意点を教えてください。

マニュアルとしての基本的項目、例えば目的、方法、評価等は必要です。そのうえで、未然防止としての対策、被害軽減としての対策の2つの側面からの内容、モノの活用方法等も当然加えられる必要があると思います。さらに、身体拘束についてもその概念や病院としての考え方も必要となるでしょう。

転倒転落に対するスタッフの意識を高め、持続させるには、どのようにしたら良いでしょうか?

はじめに「安全意識低減の法則」をご紹介します。
  第一法則:安全意識は、事故が発生しない限り単調に減少する
  第二法則:安全意識を上昇させるのは、事故の体験のみである
  第三法則の1:安全意識の上昇度は、事故の重大度に比例する
  第三法則の2:安全意識の上昇度は、事故と自近接度に比例する

警鐘として、『安全状態が続くほど安全意識が低下し、事故発生を準備する体制が整う』です。この法則に拠れば、スタッフご自身が事故の体験をしない限り、転倒転落(対策)の意識を持続させられないの当然なのかもしれません。また、転倒転落をはじめ、このような問題はとてもネガティブな事象ですので、「インシデントレポートを書くのはイヤだ」というように、なかなか前向きに気持ちをもっていきづらい、ということも一因かと思います。

そのようなことを理解したうえで、“できている点(コト)を見る”ということを考えてみてはいかがでしょうか。例えば、
 ●インシデント/アクシデントレポートを起票してくれたことにまずは感謝を伝える
 ●実行した対策/対応によって、うまくいった事例を共有する(転倒ハイリスク患者さんであったにもかかわらず転倒転落せずに退院できた事例など)
 ●安全ラウンドで欠点を指摘するだけではなく、よく考えられている点にもフォーカスをあてて共有する。もしその対策が取られていなかったら、このような大きな事故に至ったかもしれないという想像(仮体験)をしてもらう
などです。

このようなことを繰り返しながら、スタッフ一人一人の気持ちを前向きにさせ、また、一人でやっているのではなく、“皆でサポートしている、協力して上手くやる”という雰囲気をつくっていけると良いのではないでしょうか。

転倒転落に対する目標を設定する上でのポイントを教えてください。

目標を立てるときに重要なのは、達成できそうなことを目標にするのではなく、「あるべき姿」を高く掲げることです。できそうなことを目標にしている限り、あるべき姿には到達できません。また、「やること」を「目標」にしがちですが、両者は異なることに注意してください。
目標設定の3ステップを紹介します。
①現在の状態を把握し、ありたい状態を決定します。できる、できないは考えず、理想の状態を目指してください。
②タイムフレームを設けます。現実に合わせて目標を下げるのではなく、段階を追うことで目標に近付くことを考えます。
③「こうありたい」状態を書き出します。曖昧な表現ではなく具体的な数値や日付を設定します。

▶︎問題解決へのアプローチ1「目標の立て方」

転倒転落のインシデント/アクシデント件数は定期的に集計していますが、転倒転落発生率も算出するべきでしょうか?

是非、転倒転落発生率を算出してください。転倒転落発生率は、他施設や他病棟と比較するうえでのベンチマークとして重要であり、現状把握をするためにとても有効だからです。ただし、転倒転落発生率を算出し評価するうえで考慮しておかなければならないことが2点あります。1つ目は、身体拘束をしている割合がどうであるのかという点(身体抑制率)、2つ目は転倒転落としてのインシデント報告が軽度の事例も含めて全例報告されているのかという点です。これらによって転倒転落発生率も変動し、適切な現状把握とは成り得なくなってしまいます。転倒転落防止へつながる有効な改善策を考えていく上で適切な現状把握は非常に重要になるので、注意が必要です。

▶︎評価サポート

転倒転落に対する具体策が乏しい状況なのですが、どのように進めたら良いでしょうか?

転倒転落問題に対して、具体策(取り組む手段)は色々あります。例えば、①転倒転落リスクの高い患者さんを把握していくための手段の検討、②転倒転落防止対策として使用する物的手段の検討(これには製品そのものと、製品の使い方の2つがあります)、③チームや病院組織としての手段の検討、④患者さんへの指導や家族の協力を得るための手段の検討などです。まずはこれらの事項について、スタッフ同士で議論することが必要でしょう。以下に紹介するページでは、「問題解決へのアプローチ」として、その手法(ツール)をご紹介していますので、そちらも参考にしてみて下さい。 

▶︎問題解決へのアプローチ

他院での取り組み成功事例を教えていただけませんか?特に、離床CATCHを使用しての取り組みを知りたいです。

離床CATCH付ベッドの導入(取り組み)事例として新東京病院の例を、スマートベッドシステムの導入(取り組み)事例として佐久総合病院の例を、「事例」のページで紹介させていただいております。そちらをご参照下さい。今後も、様々な病院での取り組み成功事例を取り上げていく予定です。

▶︎事例

他院での取り組みにおいて、うまくいかなかった事例を教えていただけませんか?

例えば、「事例」のページで紹介している新東京病院の例では、新築移転と合わせてハード面での対策強化を実施しましたが、結果、センサーの無駄鳴り(ナースコールの発報が増えた)や、看護師のアセスメント能力差によるバラツキなど、新たな問題が生じてしまいました。他院での取り組みとしてうまくいかなかった事例を教訓に、自院の取り組みに活かしたい意図でのご質問かと推察しますが、新たな取り組みを実施していく上では、必ずしも期待通りの結果がすぐには出てこないのが実際です。特に転倒転落対策においては、結果がすぐには見えにくいという側面もあります。取り組みがうまくいかなかったからといってそのままあきらめずに、継続的に取り組むことを意識してみて下さい。

▶︎事例—新東京病院
▶︎転倒転落対策の考え方

転倒転落対策のプロセスについて教えていただけませんか?

RoomT2では、転倒転落対策について以下のプロセスを提案しています。

①自分たちの現状を評価する【どこでどのように転倒転落が起きているのか等、情報を整理する】、②安全対策備品を導入する【転倒転落を防止する安全対策備品について、数量の把握や備品導入の適正化に関する検討を行う】、③安全対策備品を活用する【安全対策備品を病院や患者さんの状況に合わせて上手に活用する】、④仕組みづくりをする【転倒転落を未然に防ぐために、スタッフ同士の意見交換、患者教育、安全対策備品を使っていくためのルールづくりなどを行う】。

以下に紹介するページでは、上記プロセスに応じた様々なサポート資料も提供していますので、是非ご活用下さい。

▶︎必要な対策をセルフチェック

 

多職種連携
転倒転落防止の取り組みで、医師との協働についてどのような方法があるでしょうか?

まずは医療安全管理室に所属の医師とよく話し合い、転倒転落防止チームを作ってみてはいかがでしょうか。医師にも主体的にチームの活動に関わってもらうことがスタートかと思います。そのうえで、普段の活動として、主治医から患者/家族への転倒の危険性と対策の必要性についてのIC(インフォームド・コンセント)や、各科専門医へのコンサルト依頼、薬剤師への服薬指導依頼、リハビリへの評価依頼、さらにウォーキングカンファレンスの参加までできればよいですね。転倒転落防止チームの医師から、院内各科の医師に働きかけてもらうことで、院内全体で転倒転落対策に取り組む文化の醸成につながるのではないでしょうか。

多職種で連携を行っている具体的事例があれば教えてください。

看護師が離床センサー(離床CATCH)の設定を開始/変更する際には、必ずリハビリスタッフに相談するルールになっている病院があります。患者さんのADLを専門的見地からしっかり把握しているリハビリスタッフが、患者さんに最も適切な設定を検討し、共有してくれるという運用をとっています。
また、医師の安静度指示は患部に対するものと認識し、リハビリスタッフが患者さんの現状に合わせた安静度(ADLアップと転倒リスクの両面から検討)を細かく設定し、病棟看護師に共有(指示)している病院もあります。

多職種連携を今以上に進めていくための連携方法についてアドバイスをいただけませんか?

多職種のもとでの転倒転落防止チームをつくってみてはいかがでしょうか。そして、そのチームリーダーを、看護師以外のスタッフに担ってもらうことです。チームで転倒転落した患者さんを訪問し、担当看護師とともに、なぜ転倒転落が起きたのかを議論し、意見を交わすなど、共通の目標をもって行動していくことで、看護師がいつもリードしてしまうのでなく、多職種への関心を呼び起こすことができるのではないでしょうか。多職種が連携していくためには、患者さんの安全(ここでは転倒転落予防)という共通する目標に対して、それぞれの専門職が自分にできることとして何を実施していくのかを具体的に決めて行動していくことではないかと思います。

離床CATCHは看護師のみが研修を受けて使用しているため、リハビリスタッフなど、患者さんに関わる多職種への周知が必要だと考えています。どのように進めたら良いでしょうか?

離床CATCHの設定は、リハビリスタッフや看護助手も行うことが少なくありません。したがって、離床CATCHの使い方等の研修会には、リハビリスタッフや看護助手も参加することをお勧めいたします。他院では、看護助手が使い方に関する研修会に参加したことで、離床CATCHを使える人と使えない人の差がなくなり、皆が正しく積極的に使えるようになった、との例もあります。研修参加が難しい場合には、離床CATCH(中継ユニット)の使い方動画も是非ご活用ください。

スタッフ教育
KYTのセンスを磨くと転倒転落を未然に防ぐことが出来ると思うのですが、研修をなかなか行うことが出来ず困っています。KYTセンスを磨くための方法を教えていただけますでしょうか。

コロナ禍での集合研修が難しいなど事情があり、スタッフ教育が滞ってしまうことがあるかと思います。集合研修が難しい場合は、例えば日々のカンファレンスをウォーキングカンファレンスとして行い、ベッドサイドで患者さんを見ながらチーム内で短時間のKYTを実践してみてはいかがでしょうか。数人で話し合うことで自分にない視点を学ぶことができますし、そのまま対策に活かすこともできます。リアルな病室でKYTを行うことは、座学以上に学ぶことが多いのではないでしょうか。
また、パラマウントベッドからはKYT研修の動画をご提供しています。院内LANに入れていただいての視聴や、各自のスマホからの視聴も可能ですので、営業担当者またはパラマウントベッド営業統括部までご相談ください。

スタッフによってリスク感性に差があり、アセスメントや患者対応にバラツキが生じるなど対応が難しいと感じているのですが、どのようにしたらよいでしょうか?

教育と標準化の観点から考えることができます。

■教育
同じ状況を見た時に、そこにリスクがあると感じるスタッフもいれば、経験が少ないスタッフはリスクを感じないということもあると思います。それはスタッフ教育で補っていくことが可能です。転倒転落と相性が非常に良いKYT(危険予知トレーニング)を定期的に取り入れてはいかがでしょうか。まずは自分で考えてみること、その後に複数スタッフの意見を聞くことで、自分になかった視点を取り入れることもできます。患者に起因する要因(疾患、症状、薬、ADL等)、環境の要因(ベッド高さ、センサー設定、コード類の整備、ベッド柵等)、管理的な要因(物品の適切な管理、アセスメントのタイミング等)など様々な要因からの危険予知と対策立案は、継続したトレーニングによって、誰でも力を付けていくことができます。また、皆で話し合って対策や運用方法を決定することで、適切な対処方法を、きちんと実施していこうという意識につながることも期待できます。

■標準化
皆で取り決めたことを形式知化し、標準化するということも考えられます。例えば、センサー選定やアセスメントに際し、ベテランから新人まで同じ判断軸で考えることができるようにフローを作成し(=スタッフの頭の中にある判断軸などを形式知化してそれを標準化)、それを基に運用/議論することでアセスメント力が向上したり、対応のバラツキをなくすことができた、という事例があります。

コロナ禍で集合研修ができないのですが、転倒転落に関する研修用動画などあれば教えていただけないでしょうか?

RoomT2のWebページに「動画で見る転倒転落」という下記の動画コンテンツがございます。是非ご活用ください。

「知識編① 医療安全の基本的考え方と転倒転落防止へのアプローチ」
「知識編② 転倒転落の実態と発生要因である患者要因を焦点に」
「知識編③ 転倒転落防止対策の立案ツール」
「知識編④ 改善活動の取り組み方~転倒転落を解決するリーダーシップ~」

▶︎動画で見る転倒転落

また、パラマウントベッドでは転倒転落対策として安全勉強会のコンテンツをご用意しています。詳細は、営業担当者またはパラマウントベッド営業統括部までご相談ください。

病棟毎にどのように教育/研修を実施したら良いでしょうか?

病棟毎での転倒転落に関する教育/研修を行うにあたっては、その病棟で発生した転倒転落事例を一つ取り上げて病棟内で検討してみると良いと思います。その際に重要なのは、転倒転落の発生要因をあらゆる角度から分析することです。注意しなければならないこととして、“誰々さんが○○をしなかったから“というような話題にならないようにすることが大切です。その患者さんをめぐる広い意味での環境からの要因について話し合うことです。そして、対策を検討するにあたっては、その病棟のみに通用する手順等はつくらないことです。部分最適をつくってはいけません。病院全体が同様の手順を実施できること、全体最適にすることが重要です。そのために、病棟のリーダーは、老年看護や認知症など様々なテーマで、研修会や伝達講習を定期的に(無理のない程度で)企画されることが良いと思います。

家族と行う取り組み
患者・家族へ「転ぶかもしれない.大怪我をしないように対応をする」と入院時に伝えていいものか悩んでいます。

病院という在宅とは異なる環境の中で転倒転落が発生するということを、患者・家族に伝えて、事前の認識をしてもらうことはとても大切なことです。しかし、病院の防御としての説明の仕方ではなく、患者・家族の立場に立った説明の仕方が必要です。そのうえで、患者・家族としての協力を得ることが大切だと思います。

転倒転落対策を行う上で、患者さんや家族も交えて実践しているという話を聞いたことがあります。患者さんや家族への協力要請や注意喚起の方法などについて、アドバイスをいただけませんか?

患者・家族への説明においては、看護師のキャリアにかかわらず同じ説明を行うために、パンフレット(危険度色別パンフレットなど)を用いることを推奨します。図や、動画なども取り入れて、どの患者さんにも分かりやすい資料で説明、お渡しできると良いと思います。仮に家族が同席できなかったとしても、後日家族にも必ず内容の共有を行うと良いでしょう。また、転倒転落アセスメントシートを患者・家族と一緒にチェックしていくこともお勧めします。患者さんが自分では気付いていないリスクについて、医療・看護の専門的な立場から説明することで、転倒転落のリスクと対策について理解・協力を得られます。病院にお任せではなく、患者・家族も一緒に対策を考えていく必要があることを理解いただけると良いでしょう。

身体拘束を減らす
本当は身体拘束をしたくないのに、そうせざるを得ない場面があることに看護師はジレンマを感じ、悩んでいます。管理者として何ができるでしょうか?

この問題には、特効薬はありません。しかし、改めて身体拘束の現状を見つめなおし、何故身体拘束をするのか、その理由に妥当性があるのか、患者や家族の立場にたってみて許容される範疇かどうか、誰が拘束することを決めているのか、どんな手段を取るべきか等々、職場内で率直に論議することなしには、解決の手立てはないと思います。身体拘束をしてしまう意思決定のプロセスについて振り返ることが重要です。
これまでの習慣を打破するためには、看護師への教育のみでは不足していますので、看護業務のやり方や仕組みのプロセスを見直すことです。例えば、身体拘束の同意書をいつとっているでしょうか。身体拘束の同意書は手術などの治療の同意書とは性質が異なります。入院時に身体拘束の同意書を家族から一律に取ることは適切でしょうか。入院時に同意書をとることで、身体拘束をしても構わないという認識を看護師が持ってしまってはいないでしょうか。家族としてみれば、入院時に転倒転落防止のために身体拘束の同意をさせられた、仮に不幸にも転倒し骨折したとすると、なぜその時に身体拘束をして防いでくれなかったのか、となってしまわないでしょうか?身体拘束を含めた転倒転落防止の取り組みを、業務改善プロセスの視点から見直してみましょう。

身体拘束しないようにするにはどうしたらいいのでしょうか?

まず、貴院において、何故身体拘束しているのかを書き出してみて下さい。そのうえで、それぞれの身体拘束をしている意味について論議してみましょう。

離床CATCHを使うことは身体拘束にあたるのでしょうか?

日本看護協会のデータベース(DiNQL)事業では、身体的拘束の定義として、「抑制帯等、患者の身体又は衣服に触れるなんらかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限を指す」とされています。そのため、ベッド内蔵型の離床センサー「離床CATCH」は、患者さんの身体がベッドに触れているという点において、抑制具として捉えるのかどうか、という質問を多くいただきます。
この質問の背景には、認知症ケア加算における算定要件の問題があると思っています。認知症ケア加算は、「身体的拘束をせずにケアを行う」ことが求められており、「身体的拘束を実施した日は、所定点数の100分の60に相当する点数を算定する」となっているからです。
離床CATCHは、ベッドに内蔵した荷重センサーがベッド上の患者の荷重変化をセンシングし、患者さんの起きあがり、端坐位、離床などの患者行動としてナースコールに知らせるものです。センサーはベッドに内蔵されていますので、患者さんに直接触れているわけではありません。これが“抑制具(身体的拘束)”と捉えられるのであれば、それは使用目的(「離床CATCH」を自立を促すために使用しているのではなく、行動制限のために使用している)に改善すべき課題があるのではないかと思います。

身体拘束の考え方について教えていただけませんか?

この患者さんは動いて転倒転落のリスクがあるから、と身体拘束をする前に、まず考えてみることがあります。それは患者さんが「動く」という行動要因についてです。なぜ「動く」のかということです。例えば、認知症の患者さんは自身の身体機能や環境の変化(見知らぬ人や見知らぬ場所等)を自身で認識することができません。だから衝動的に動いてしまうのです。それを危ないといって抑制してしまっては本末転倒です。患者さんがどうしたいのかというニーズや困り事を解決しながら、転倒転落のリスクを減らしていくことが本来であり、身体拘束することが第一ではないはずです。そのためには、患者さんが行動を起こしても転倒転落しないような環境づくりやケアの仕方を工夫し、患者さんの行動を支援することを考えましょう。ベッドの高さを低くする、ベッドの向きや位置を調整する、ずり落ちないように端部が硬いマットレスを使用する、つかまって歩ける手すりを設置する、オーバーベッドテーブルなどのキャスターをロックする、離床センサーを設置する、患者さんの睡眠状態を把握できる睡眠センサーを導入するなど、環境の整備として考えるべきことがたくさんあるのではないでしょうか。「動画で見る転倒転落」『知識編③ 転倒転落防止対策の立案ツール』もご視聴下さい。

▶︎動画で見る転倒転落

身体拘束をしない看護について、具体的な取り組みを教えていただけませんか?

物としての抑制帯が病棟にあれば、知らず知らずのうちに、前にも使っていたから、と使用してしまうのが人の常です。思い切って抑制帯を廃棄し、なくしてしまうことなどを考えてみましょう。そして、離床センサー等の活用について、患者選定や設置基準などに関する取り組みを強化していくことを考えてみて下さい。

離床センサーを導入したものの、なかなか抑制帯の使用をやめることができません。どうしたら良いでしょうか?

離床CATCHを導入したことで身体拘束を減らすことができたという報告は数多くあります。いきなり全ての身体拘束解除は難しいかもしれませんので、解除できそうな患者さんから少しずつ抑制帯を外してセンサーに切り替えてみませんか。患者さんのADLに合わせたセンサーの設定ができるように皆で話し合ったり、標準化するなどして、センサーの成功体験を少しずつ積み重ね、広げていくことで、身体拘束しないことが当たり前の風土が醸成されるのではないでしょうか。

▶︎運用サポート

重傷事故を減らす
転倒転落はどうしても起こり得ることですが、転倒転落による患者さんの傷害を小さくするにはどうしたら良いでしょうか?

転倒転落発生時に身体が受ける衝撃を緩和する被害軽減のための対策用具として、衝撃緩和マットや低床ベッド、サイドサポートがあります。転倒転落のリスクが高い患者さんには、ベッドの高さを低くして、ベッドサイドに衝撃緩和マットを敷いておくことで、万が一の場合にも傷害の程度を軽減することが期待できます。また、サイドレール(ベッド柵)を乗り越えてしまうような患者さんには、サイドレールの代わりにサイドサポートを使用することで、落下衝撃を軽減することができます。

低床ベッドと衝撃緩和マット テストール

▶︎低床ベッド(パラマウントベッド(株)ホームページ)

転倒転落アセスメントに関するQ&A

アセスメントシートのチェックについて、管理者として何をどのように考えていけばよいでしょうか?

医療安全の推進には、2つのベクトルがあります。安全を目的とした教育とシステムです。教育は個々人を対象とし、システムは組織の決定事項です。これら2つをうまく融合する必要があります。転倒転落防止においては、システムはアセスメントシートへのチェックであり
アセスメントの項目をどのようにするか、研究や調査が学会等でも数多く報告されています。ただ、転倒転落アセスメントの実施の前に、アセスメントする人材をどう育成するかという点について、まず考えてみましょう(=教育の観点)。
アセスメントシートチェック前の取り組み、つまり医学的視点から患者の疾患や病態の特性をとらえ、その患者の生活状態や行動パターンを知ること。患者観察、患者理解からスタートしてアセスメントで転倒転落リスクを抽出し、リスクが拡大する危険性をもつ患者に対策を実施すること。そうした前提からのスタートについて振り返ってみましょう。
例えば、疾患や認知症を理解する勉強会や、看護ケアの倫理等、アセスメント前の人材教育の必要があります。そのことと、転倒転落事故発生の相関関係を確認してみましょう。

病状、安静度、ADLなど患者さんの変化に応じた再アセスメントが適切にできていないので、患者さんの現在の状態に合わせた対策になっていません。

患者さんは日々変化しているので、適切なタイミングで再アセスメントが行われないと、対策が合わなくなる、ということが起こりますね。多くの病院さんでは転倒転落アセスメントを入院当日、3日後、1週間後、転倒転落時、病状変化時などと決めて、定期的に行っているかと思います。そのタイミングに併せて看護師が個々の対策を見直すことも大切ですが、ADLの変化などは見逃しがちです。患者さんのADL状況をよく理解しているリハビリスタッフと連携し、ADL変化をタイムリーに共有できる仕組みを作ってみるのも良いでしょう。その際、他職種間でADL評価や安静度の定義を統一し、認識の相違がないようにすることも必要でしょう。さらにADL評価については、どの職種、どんな経験年数であっても、誰が評価しても同じ結果になるような判断軸(チェックリスト)を作成することも良いと思います。そのアセスメント結果から対策に結びつけるフローなどを作成・運用すれば、誰もが迷わずにスムーズに適切な対策を実施できます。
離床CATCHの設定フローもその一つであり、日々の担当スタッフが行う習慣がつけば、タイムリーにアセスメント&対策が実施され、同時に各スタッフのアセスメント力がつくことも期待できます。

看護師のアセスメント力が十分ではなく、アセスメントシートのチェックも形骸化しています。他院の事例として、どのような対策が取られていますか?

・患者カンファレンス時に、カンファレンス用チェックシート(転倒リスク因子や対策についてチェックしながら話し合いで決めていく)を活用している病院もあります。これにより、だらだらと話して終わるカンファレンスにならず、要点を絞った話し合いができるため、アセスメント向上に役立つようです。
・各病棟に数人の転倒転落マイスターを配置し、担当者としての意識を持ってもらったうえで、カンファレンスなどを通して日々スタッフを教育するなども有効かと思います。
・多職種でのKYT研修を行うことで、様々な視点からのアセスメントが可能となるため、視野を広げ、アセスメント力を深めることができます。

転倒転落アセスメントスコアシートで危険度Ⅲより危険度Ⅱの患者さんの転倒転落が大半をしめています。危険度Ⅱの患者さんが7割近くとなってしまい、どちらかといえばノーマークの患者さんの転倒転落が多いという結果となります。危険度Ⅲの患者さんは転倒転落したケースが少ないです。 アセスメントスコアの配点などを工夫した方がよいのでしょうか?

転倒転落アセスメントでは、危険度ⅢよりⅡの患者さんが多く転倒しているというのは当然のことでしょう。Ⅲは身体症状・状態が重くなるので、自分で楽には動けない患者さんとなりますが、Ⅱは比較的症状が軽く自分の意思で動ける患者さんだからです。
アセスメントスコアの配点は、何のためにしているのでしょうか。配点するのは対策を講じていくためのスクリーニングとしての意味があります。ノーマークの患者さんの転倒転落が多く、アセスメントが役に立っていないのであれば、当然ながらアセスメントシートの内容項目の見直しも必要かと思います。

看護師個々の転倒転落に対するアセスメント力を向上させるためにはどのような取り組みが効果的でしょうか?

転倒防止活動への要件として、アセスメントシートのチェック前の取り組みについてこだわっていく必要があると思います。医学的視点から患者の疾患や病態の特性をとらえ、その患者の生活状態や行動パターンを知ることが一つです。患者観察、患者理解をしたうえでアセスメントで転倒転落リスクを抽出し、リスクが拡大する危険性をもつ患者に対策を実施すること。そうした前提からのスタートについて振り返ってみる必要がありそうです。例えば、疾患や認知症を理解する勉強会であり、看護ケアの倫理等についてです。アセスメント力を向上させるための取り組みとは、即ち転倒転落防止に関しての教育計画とその実施です。教育をどのように実施していくのかにつきるのではないでしょうか。

アセスメント評価や対策は入院に関わった看護師に任せていますが、対策が主観的になってしまいます。また、リスク評価で出たスコアに応じて、同じ対策ができるようにしたいのですが、どうすれば良いでしょうか?

アセスメント評価(アセスメントチェック用紙への記入及び看護計画作成)を入院担当の看護師が行うのは、止むを得ないと思いますが、翌日の昼のカンファレンスではチーム内の看護師間で一度再検討することが必要です。特に、チェックの仕方は個々の看護師の主観によるところが大きいので、それぞれのチェック項目に対対する説明を明記/共有しておくことも必要でしょう(どういう時にチェックを入れるのか)。同じ患者さんを数人の看護師でチェックし、どの点がどのように異なっているのかを確認していくことで、より明確になっていくと思います。さらに、スコアに応じて同じ対策を講じることができるようにするためには、ここにチェックがついた場合にはこれをする、という対策一覧を作り標準化することが必要です。スタッフ同士で議論してみて下さい。

入院当初は落ち着いている患者さんでも、環境の変化等により落ち着かなくなることがあります。また、高齢化が進んでいることもあり、一日の中での体調変化が多い(大きい)患者さんも多いです。そのような場合のアセスメントについて、アドバイスをいただけないでしょうか?

転倒転落のアセスメントは日毎に、極端にいえば時々刻々と変化していくものという風に捉えておくことが必要だと思います。いわゆる患者の病状や症状、気分の変化に伴うものであるということです。しかし、だからといって、常にアセスメントをし続けるという事もできませんので、アセスメントシートの結果からおおよその傾向と程度を把握しておくということが必要になります。アセスメントの実施時期としては、入院時、入院後2~3日、その後は変化がなければ1週間毎というのが一般的です。入院してから2~3日後に転倒転落が多いというデータがあるからです(入院環境に少し慣れて、患者さんが自分で動き出すため)。変化とは、手術をした後、病状の変化があった時などで、そのようなタイミングでは随時アセスメントをやり直し、共有化を図るということが必要になってきます。アセスメントの実施手順として決めておくことが必要です。

自立している患者さん(転倒転落のリスクが低い患者さん)でも転倒転落の可能性がありますが、アセスメントをする際にどのようのことに気を付ければ良いでしょうか?

看護の視点からだけでなく、リハビリの視点からのアセスメントとして、歩行能力やバランス能力なども観察に取り入れると良いと思います。看護職とリハ職がそれぞれのアセスメントをタイムリーに共有して、患者さんに必要なケアを考えることがとても大切です。そのためには情報共有をどのようにするのか、その仕組みづくりが重要になってきます。また、転倒転落するリスクが少しでもある患者さんは「自立」と判断するのではなく、「見守り」等が必要なのではないでしょうか。自宅では自立であっても、病院という環境、治療による症状、副作用の出現などにより、自立とすべきではない患者さんもいらっしゃると思います。患者さんは絶えず変化するということを認識したうえで、アセスメントしていくことが求められます。

転倒転落を防ぐ方法は重要ですが、予測をどのように行えば良いか教えていただけませんか?

転倒転落の予測は、まず転倒転落に関する患者さんのアセスメントを実施するということです。これにより患者さん自身の転倒転落リスクが分かります。また、もう一つ重要な観点として、物理的環境がどのようになっているかを考えるということです。それは例えば、ベッドの高さ設定はどうなっているか、トイレまでの距離はどの程度あるか、などです。アセスメントの結果と物理的環境の状況、これら双方を掛け合わせることで、最終的に予測を図っていくということになります。さらに、看護師の予測性を高めていく教育手段として、KYTを推奨しています。

どのような患者さんが転倒転落を起こしやすいのでしょうか?例えば「待てない性格」「遠慮がち」など、アセスメントで考慮すべき事項があれば教えていただけませんか?

どのような患者さんが転倒転落を起こしやすいかということですが、言い換えれば、私たちが転倒転落リスクがある患者をどう見極めるかということになるかと思います。見極め方としては、患者さんが転倒転落する原因を把握しておくことです。それは第一に、疾患名や合併症、症状、歩行機能、ADLといった身体状況です。体格や体重、視力・聴力、夜間のトイレ回数等もあるでしょう。第二に精神状態(意識状態)があります。認知症の程度や、理解力等、不眠もあるかもしれません。第三として、ご質問にもある性格です。「待てない性格」「遠慮がち」などですが、性格はすぐには分かりません。コミュニケーションをとりながら、徐々に分かってくることです。アセスメントシート項目に「性格」が記載されているのは、転倒転落を起こした患者さんのデータから転倒転落の一要因として抽出されたことによるものですが、入院当初においては、ご本人やご家族から聞き取りをするということになるかと思います。さらに第四として.患者さんの生活習慣です。特に転倒転落既往のある患者さんでは、どのようなときに転倒したのか(物を拾おうとして、立とうとして、つまずいて、夜間のトイレへの移動時になど)詳細を聞いておくと参考になると思います。

入院してすぐなど、患者さんの状況がまだ十分つかめない時や、患者さんが認知症であったり、病識が薄い事から起こる転倒転落を減らすにはどうしたら良いでしょうか?

入院直後や、患者さんの状況が十分につかめない時、また夜間の緊急入院においては、患者さんは転倒転落するものと認識して対応することが必要だと思います。予定入院では、それなりの情報を得ておくことができますが、それ以外の場合では、一時的に転倒転落を想定して対応をしておくべきだと思います。そのような時は、転倒転落しないような環境整備についての配慮が必要だと思います。例えば、ベッドは低床にしておく、オーバーベッドテーブルなど動くモノは置かない、あるいは、ロックをしておく、離床センサーを使用するなどです。病院という物理的、空間的環境に慣れていないことへの対応が必要ではないでしょうか。

転倒転落対策への
取り組み方(ハード面)に関するQ&A

転倒転落対策製品
ベッドを低床にしても、足が届かない患者さんへの対応は、どのようにすればよいでしょうか?

患者さんが端座位を取ったときに足裏が床にしっかりと付いていない状態というのは非常に危険です。立ち上がりの際に転倒転落リスクが高くなるため、足裏が床にしっかりと付くようにベッド高さを設定する必要があります。貴院で使用しているベッドを確認してみてください。最近の医療介護ベッドは最低床25㎝のタイプや、さらには超低床15㎝のタイプもあります。背の低い患者さんには、是非低床・超低床ベッドを選択し、安全な環境を整えるようにしてください。

▶︎低床ベッド(パラマウントベッド(株)ホームページ)

良いモノ(製品)を使用しても、使う看護師がその効果を発揮できるような使用の仕方をしないといけないと思っています。モノを使ううえでの標準的な関わりやフローなど何か参考になるものがありますか?

ご指摘のように、どんなに良いモノでも使い方に問題があればその効果は発揮されません。RoomT2の冊子やホームページ等を通じて、効果があったとご紹介している事例は、使い方としての看護師の認識を高めたという事例や、運用手順を改善したという事例ですので、参考にしてみて下さい。

▶︎事例紹介

▶︎運用サポート

ベッドの背あげ・膝あげ機能が転倒転落対策に有効と聞いたのですが、教えてください。

最近は、人間工学に基づいて「背あげ」と「膝あげ」が連動し骨盤の立った快適な背あげができる機能がついているベッド(カインドPLUSモーションなど)もあります。本機能が付いていることに気付いていない場合もありますので、メーカーに確認してみてください。
骨盤の立った安定した背あげができると、苦痛が少なく、身体がずれにくく、端座位・立ちあがりへの移行もスムーズになるので、転倒転落リスクが軽減します。ただし、背あげ時に横に倒れると、サイドレールを越えて転落するリスクもあります。安楽な姿勢、安定した姿勢を保持できるようにポジショニングクッションを活用することをお勧めします。また、背あげをする際には、ずれ防止のため患者さんの寝位置にも気を付けましょう。

▶︎カインドPLUSモーション(パラマウントベッド(株)ホームページ)
▶︎バナナフィット(パラマウントベッド(株)ホームページ)

離床センサーを取り敢えず付けて安心してしまうスタッフが多いのですが、どうしたら良いでしょうか?

「患者さんがナースコールを押さず、ひとりで動いて危険なので離床センサーを使用した。患者・家族には必要性を説明した。」といった記録で終わり、あとは鳴ったときに駆け付ければよいという意識だけでセンサーを活用していることはないでしょうか。
患者さんは何故動くのか、何か苦痛があるから?、眠れないから?、頻尿のため?、遠慮がある?、患者さんのニーズや何をどう感じているのかまで想像し、積極的に(全人的な)情報や行動パターンを取得し、様々な視点からアセスメントしケアすることで、患者さんの安楽につながり、離床センサーに振り回されず(後手にならず鳴動回数を減らし)、必要な方に適切なタイミングで介助に入れるようになるのかもしれません。センサーを活用するうえで、患者個人に対する興味関心、アセスメント力を磨くための教育に、まず力を入れることも重要ではないでしょうか。

IVスタンドを使って移動などをしている時の転倒事故を防ぎたいのですが、何か良い対策はありますか?

IVスタンドを使って移動などをしている時の転倒を助長する要因としては、①IVスタンドが不安定、②キャスターの動きが悪く、ブレーキがかかってしまうなどがあります。①への対策としては、安定性がより高い5脚の製品や低重心設計のIVスタンドを使用すると良いでしょう。また大容量の輸液バッグを使用する際は支柱に近い位置(フックの先端ではなく中心)に吊り下げたり、輸液ポンプを下方かつスタンドの脚と同じ位置に取り付けると転倒しにくくなります。②への対策としては、キャスターにゴミや髪の毛などが巻き込まれていないか定期的な点検と清掃が必要です。ゴミが詰まりにくい形状で、分解清掃が可能な製品もあります。
また、エレベーターに乗り降りする時に、エレベーターの溝にキャスター部分が引っ掛かることで転倒を誘発してしまうこともあります。その対策としては、キャスターの径や幅が大きいIVスタンドを選択することが有効です。また、IVスタンドの取り扱い方として溝に対してキャスターが直角になるように進入すると引っ掛かりにくくなります。
IVスタンドのフックがカーテン上部に引っ掛かることでの転倒リスクもありますが、引っ掛かりにくい形状に設計された製品もあります。

▶︎IVスタンド スタッキングタイプ(パラマウントベッド(株)ホームページ)

▶︎IVスタンド(パラマウントベッド(株)ホームページ)

マットセンサーを使うと患者さんがまたいでしまい、クリップセンサーを使うと患者さんが外してしまい、困っています。

マットセンサーやクリップセンサーは使い慣れていることもあり、使い勝手が簡便ではありますが、またいでしまう、外してしまう、マットやコードに引っ掛かってしまう、拘束感が強いなどの課題について多くの施設から聞かれます。そのような課題を解決するためにはベッド内蔵型の離床センサーの使用をお勧めします。内蔵型センサーであるため、患者さんに気付かれずに検知できる、またいだり外したりされない、マットやコードに引っ掛からない、清潔である、拘束感を軽減するなどのメリットがあります。また「起上り」「端坐位」「離床」「見守り」など、患者さんごとに適切なタイミングで通知を設定することができます。

サイドレール(ベッド柵)を乗り越えてしまう患者さんへの対策として、何か良い方法があれば教えてください。

患者さんがサイドレール(ベッド柵)を乗り越えてしまう原因として、二つのことが考えられます。 一つ目は、安易に4点柵にしていないか?ということ、 二つ目は、ナースコールやよく使う物(ティッシュ・飲み物・タオル等)が患者さんから取りにくい位置に置かれていないか?ということです。
一つ目の4点柵については、周りを全てサイドレールで囲まれてしまうことで、患者さんの閉塞感や不安感につながり、特に、認知力が低下している患者さんの場合、トイレに行きたい、ここから出たいと思ったときに、サイドレールを取り外すことに考えが及ばず、サイドレールを乗り越えるという行動を誘発してしまうことがあります。 対策としては、3点柵/2点柵にするなどして乗り降りできるスペースを開けておくと良いでしょう。3点柵/2点柵では転落リスクがあると考えられる患者さんには、万一の転落を想定して、ベッドを低床にし、乗り降りする位置に衝撃緩衝マットを敷くことで、リスクを最小限にすることができます。
二つ目については、ナースコールやよく使う物(ティッシュ・飲み物、タオル等)は患者さんの取りやすいところに置くなど、ベッドから無理に身体を乗り出すことのない環境づくりに配慮すると良いでしょう。
他施設の例では、衝撃緩和マットや低床ベッドの使用と共にサイドレールを撤廃したり、サイドレールの代わりにサイドサポート(下記リンク先参照)を使用するなど、サイドレールを乗り越えてしまうような環境をそもそも作らないようにするなど、発想を転換した成功事例もあります。

▶︎サイドサポート(パラマウントベッド(株)ホームページ)

離床センサー使用時に他の施設では同意を得て使用しているのでしょうか?それは抑制・行動制限ととらえているのでしょうか?

離床センサーの同意書をとっているところもあればとっていない施設もありますし、抑制・行動制限ととらえるかどうかは、その施設ごと、安全管理者ごとに考えが異なっているようです。正確な数値はわかりませんが、同意書を取っている施設の方が少数のようです。
離床センサーは、使い方次第で行動制限にもなり得ると考えられるでしょう。離床センサーが鳴って訪室し「危ないから動かないで!」と行動を制止すれば(スピーチロック)行動制限になるでしょう。しかし、患者さんをトイレに介助したり、気分転換で歩行介助したりといった患者ニーズを満たすため、つまり質の高い看護提供に活かすための離床センサーとして使用するのであれば、抑制・行動制限にはならないと考えています。使い方次第と言えるのではないでしょうか。ただ、倫理的に考えると、患者・家族への説明は必要なのかもしれません。患者さんの安全のため、抑制しないため、患者さんのニーズを把握するために行うことを理解していただければ家族としても安心ですし、しっかり対策をとっていることが伝わるのではないでしょうか。
離床センサーが抑制・行動制限ととらえられるかどうかについて、定義の統一は別として、せめて現場の方には患者ニーズを満たすためのツールとして使っていただくような教育が大切ではないでしょうか。

同意書について他院の事例を紹介します。
■A病院
同意は取っていない。ただし、病床毎に「安全の為、センサーによる通知があった場合に看護師が訪室することがある」旨の掲示を行っている。
■B病院
同意を取っている。センサーでの見守りは”物理的に”抑制していないため患者本人は気付けない。だからこそ同意を取るべき、という考え。

離床センサーを解除することがなかなかできません。安心のために、ついついセンサーをつけっぱなしにしてしまいがちです。

離床センサーを解除した直後に患者さんが転倒してしまうこともあるので、解除することに不安があり、なかなか解除に踏み切れないスタッフもいるでしょう。そこには、”個人が”判断するアセスメントの不安もあると思います。RoomT2では離床センサーの選択フロー等の運用を推奨していますが、フローの中に解除の判断基準を入れてはいかがでしょうか。ベテランも新人スタッフも同じ判断軸を持つことができ、解除への不安も少なくなるのではないでしょうか。その基準に従ってセンサー解除した場合に、万一事故が起こったとしたら、原因を深掘りし、今一度フローを見直すなどのシステムアプローチ、つまり組織的な対応によって事故を繰り返さない仕組みを構築することができます。

離床センサーが作動しないことがあります。

離床センサーは転倒転落対策に非常に便利な製品ですが、どのセンサーであっても機器の特性を理解した上で正しく使用することが求められます。ケアや家族面会時にセンサーをOFFにしたまま、センサーをONにし忘れるなどはよくある事象で、運用面での工夫が必要です。また、離床センサーの特性によって検知しないケース(不得意なケース)があるため、検知の仕組みや検知しないケースと対策について、メーカーの説明や取扱説明書で十分に確認し、現場に周知の上で運用することがトラブル回避の上で重要です。

離床センサーが多種多様にあり、うまく使いこなせていない気がします。

離床センサーはマット型、クリップ型、ベッド内蔵型、赤外線・超音波、タッチ型等々、多種多様にあり、ご施設によっては多くの種類を導入していることがあるかと思います。必要な患者さんに適切なセンサーを選択できていれば良いですが、現場の判断に任せていると適切な運用は難しいのではないでしょうか。あるご施設の事例では、どの患者さんにどのセンサー/機能を使用するかというセンサー設定フローを作成したことで、センサー種類や設定に迷うことなく、必要な患者さんに速やかに適切なセンサーを使用することができるようになりました。これによってスタッフの経験や勘によらないセンサー設定が可能となり、適切なタイミングで介助に入ることができるようになりました。他には、複数種類のセンサーの使用をやめてベッド内蔵型に統一したことで、運用の煩雑さをなくしたご施設の事例もあります。

▶︎事例—新東京病院

エアマットレスを使用する際に注意することを教えてください。

褥瘡リスクの高い患者さんに厚みがあるエアマットレスを使用することがありますが、転倒転落の観点からは注意が必要です。フカフカした状態のマットレス上で端座位をとると沈みこんで滑り落ちたり、バランスを崩すことがあります。また、背上げ時の転落リスクも高くなります。対策としては、介助バー(L字柵)を使用する、スタッフ2人で介助にあたる、空気圧を上げてエアマットレスを固くする機能を使用するなどがあります。

▶︎ここちあ利楽flow(パラマウントベッド(株)ホームページ)

衝撃緩和マットについて、どのような製品がありますか?

パラマウントベッドでは、衝撃緩和マットとして「テストール」という製品があります。衝撃吸収性に優れたウレタンフォームの2層構造になっており、歩行によるつまずきの予防や車いすに配慮し、周囲に緩やかな傾斜を設けた形状としています。テストールを使用することで、万一ベッドから転落したときでも衝撃を軽減することができます。

衝撃緩和マット テストール

▶︎テストール(パラマウントベッド(株)ホームページ)

離床CATCH/使い方
離床CATCHの中継ユニットケーブルの破損が多くあり、困っています。

中継ユニットのケーブルが破損すると、特に古い機種では修理に時間がかかるなどして使えない期間ができてしまうことと、修理代がかかってしまうといったデメリットがあります。ケーブル破損については非常に多い病院さんと、ほとんどない病院さんがあります。これには理由があります。
急性期のようにベッド移動が多い病棟では中継ユニットの移動に伴い、ケーブルの抜き差しが多くなります。その際、急いでいて斜めに抜き差しするなど扱い方が乱雑になってしまうことで破損したり、ベッド移動でケーブルを接続したまま引っ張ってしまったりすることもあると思われます。看護師さんに対して、取り扱い方の注意喚起(勉強会、資料配布など)を行うことがひとつの対策になります。
また、離床CATCH付ベッドと中継ユニットを同数にしたことで破損はほとんどないといった病院さんもいらっしゃいます。同数にすることで、ベッドと中継ユニット間のケーブルの抜き差しが不要になるので、破損リスクが少なくなることと、スタッフの手間を省くこともできます。

離床CATCHの特長は何ですか?

マットセンサーは踏んだら鳴る、クリップセンサーは外れたら鳴る、などわかりやすく手軽に使いやすい製品ですが、離床CATCHは離床センサーがベッドに内蔵されていて一見センサーとはわかりません。そのため、患者さんに気付かれにくく、拘束感を与えにくい製品です。患者さんがセンサーをよけたり、外したりできないのでより安全にお使いいただけますし、検知率や誤報率といった精度が良い製品となっています。ベッド1台で「起上り」「端座位」「離床」「見守り」といった4つの機能を使うことができることも大きな特長です。ベッド内蔵型のため、不潔になりにくいというメリットもあります。

離床CATCHに一時停止機能はありますか?体位変換、オムツ交換、これから離床するなどのときにセンサーオフにするので、その後オンの実施忘れが発生しています。一時停止した後に一定時間で再度センサーがオンになるなどの機能があるとありがたいです。

NU-1000/2000/3000/4000シリーズの中継ユニットには、一時停止機能が備わっています。一時停止ボタンを押すことで、離床CATCHが患者さんの離床を検知してもナースコールが鳴動しないような仕組みとなっています。一時停止機能を開始してから3分経つと、自動的にナースコールが鳴動する状態に戻ります。ベッドナビ(適合ベッド機種の確認が必要です)を使用すれば、1分、3分、5分の中から一時停止時間を選択できます。

▶︎ベッドナビ(パラマウントベッド(株)ホームページ)

離床CATCHが鳴らないことがあります。原因は何でしょうか?

離床CATCH Ⅰ/Ⅱであれば、
・検知後の再設定忘れ
・患者さんがベッド上で臥床していない状態で通知ONにした
の可能性が高いです。

離床CATCH Ⅰ/Ⅱ/Ⅲいずれのバージョンにも共通することとしては、
・患者さんの起上り方によっては検知ができない、ずり落ちなど時間をかけた離床では検知ができないなど離床CATCHの特性的な原因
・ケーブル接続部のゆるみなど物理的な原因

が主なものとして挙げられます。詳細についてはパラマウントベッド営業担当者または営業統括部までご相談ください。

ベッド上でずりずりとゆっくり移動される時(ずり落ち)は、離床CATCHで検知できないことがあります。その対策を教えていただけませんか?

どんな離床センサーでもすべてを検知することはできず、例えば離床CATCHでは、ベッドからのずり落ちに対しては検知が難しいことがあります。そのような特性を理解した上で、ずり落ちのリスクのある患者さんに対しては、衝撃緩和マットを敷く、ベッドを低床にする、マットセンサーを敷いて足が床に着いたときに検知できるようにするなど、対策を複合的に行うことで対処できるようになります。

通常のナースコールで呼ばれたのか、離床CATCHで呼ばれたのか、音が同じで判断ができません。何か良い方法はありますか?

ナースコールの機種によって、ナースコールと離床CATCHの鳴り分けが可能な製品もあります。詳しくはナースコールメーカーに一度確認してみて下さい。

離床CATCH/運用・活用
離床CATCHには4つの機能がありますが、どの患者さんにどの機能を選べばよいのか迷います。各機能について、具体的なユーザー像はありますか?

離床キャッチには、患者さん像をイメージして、4つの機能が用意されています。

「起きあがり」:転落リスクのある方や、離床することが危険で動いたことを早く知りたい方などに使うと良いでしょう。
「端座位」:立ち上がりや歩行が不安定な方などに使うと良いでしょう。
「離床」:離床は安定しているけれど、離床後の目的忘れや行き先が分からなくなるなどの不安がある患者さんに使うと良いでしょう。
「見守り」:離床は安定しているけれど、離床先、たとえばトイレでの体調急変、目的忘れなどのリスクがある方や徘徊される方に使うと良いでしょう。

患者さんのADLが不安定な動作の手前の動作で通知する設定を選ぶことをお勧めします。ただし、動きの速い方や、部屋がステーションから遠い方などの場合は、さらに一つ早めの設定にすることも検討すると良いでしょう。

▶︎動画で見る転倒転落

離床CATCH以外にも離床センサーを持っています(床マットセンサー、クリップセンサーなど)。選定フローを作成しようとしていますが、どちらのセンサーを選択するべきか迷います。

床マットセンサー or 離床CATCHでの「端座位設定」、クリップセンサー or 離床CATCHでの「起上り設定」など、同じようなタイミングで検知するセンサーのどちらを選択するか、迷ってしまうことがあるかと思います。
離床CATCHは1台で4通りのタイミングを検知できるため、離床CATCHを第一選択、とするご施設様が多いようです。思い切って離床CATCH以外のセンサーをすべて回収し(使えないようにする)、離床CATCHのみで運用されるご施設様もいらっしゃいます。色々なセンサーを混在して使っていると、どれを選べばよいか迷うだけではなく、使い方や管理の煩雑さもあるためです。
すべて回収しないまでも、離床CATCHを第一選択にして、離床CATCHが足りない場合や不向きなケースには離床CATCH以外のセンサーを使う、とすることも一案です。その場合、具体的な例を挙げてルール化する(例えばずり落ちリスクのある患者にはマットセンサーを使うなど)と良いでしょう。
離床CATCH以外のセンサーが使えるといつまでも使ってしまいがちですが、本当に必要か、使うべきか、選定や管理の面からも今一度、院内で検討してみてはいかがでしょうか。

転倒リスクは高かったのに離床CATCHを選択していなかった、あるいは適切な機能設定ができていなかったなどが起こっています。

インシデント事例について、離床CATCH設定状態/通知状態/発報有無を記録しておくことで、患者さんにとって適切な設定となっていたかどうかの振り返りに活用できます。振り返りを元に皆で議論すると、どういう状況ならどの設定にする、といった基準が明確になってくるかと思います。その基準をフロー化することで、どのスタッフも適切な設定を行えるようになるでしょう。

離床CATCHの台数が足りないのですが、どうしたらよいでしょうか?

・まずは、本当に足りていないのかどうか、病棟だけではなく、院内全体ではどうかなど、離床CATCHの稼働状況を調査してみることをお勧めします。この病棟はこれだけ不足しているなど、根拠のある数値を準備したうえで、病棟ごとの適正数を購入申請してはいかがでしょうか。
・中継ユニットをME室などで中央管理することも有効です。一定数の中継ユニットを病棟に置きつつ、稼働数が少ない病棟の中継ユニットは中央管理の配置分として増やし、その時々に必要な部署が使えるようにすると良いでしょう。
・特にリスクの高い患者さんに優先して使えるようにするために、ハイリスク患者のアセスメントと共有の仕組み作り、あるいは設定フローの運用をしてはいかがでしょうか。

離床センサーが鳴っても駆け付けに間に合わないことがあります。他院の事例として、どのような対策が取られていますか?

・離床動作の早い患者さんには起上り0秒の設定をするなど、適切なセンサー設定を行うために、設定フローを運用している病院もあります。
・離床動作の早い患者さんはステーション近くに部屋移動し、すぐに駆け付けられるようにしていることも多いと思いますが、リスクが特に高い患者さんのためにセンサー駆け付け専用部屋を設置し、病棟の誰もがすぐに駆け付けるルールにするなどの事例もあります。
・ハイリスク患者を日々病棟全体の申し送りなどで共有することで、チームを越えて誰もがすぐに駆け付けられる体制を作る、という方法もあります。
・ADLアップ(動きが早くなってきている)に気付けるよう、病棟スタッフとリハビリスタッフとのタイムリーな情報共有体制も必要です。
・ナースコール機種によっては、コール音の識別ができるタイプもあり、全病棟でセンサーのコール音を共通にしている病院もあります。

離床CATCHや他の離床センサーを使用しています。 一時的にセンサーオフした後のセンサーオンの実施忘れが無くなりません。病室内の掲示はしており、定期的なスタッフへの注意喚起もしています。 その他の対策がありますでしょうか。

センサーオンの実施忘れの問題はどこにもありますね。忘れるというのはヒューマンエラーですが、何故忘れてしまうのかについてはもう少し掘り下げてみていくことが必要と思います。そのうえでの注意喚起や対策になっているかどうかを確認しましょう。

複数の患者さんで離床CATCHを使い、同時に鳴動した場合の優先順位はどのように考えるべきでしょうか?

日中であればスタッフ同士で声を掛け合って、同時に駆け付けることもできるでしょうが、夜間などスタッフ数が少ない時に同時にセンサーが鳴動するとどうしたらよいか本当に困りますよね。同時に鳴ったとき、スタッフの咄嗟の判断に頼るのではなく、皆が同じ対応をできるようにするためにも、普段から優先順位を病棟スタッフ全員で共有してはいかがでしょうか。例えば、出血傾向のある患者さん、骨折の既往歴がある患者さん、せん妄患者さんなど、よりハイリスクと言える患者さんについて申し送り等で日々共有し、病棟全スタッフの意識と判断を統一化しておくと良いのではないでしょうか。

離床CATCHのバージョン違い(離床CATCH Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ)が混在しているのですが、注意点などはありますか?

離床CATCH Ⅰ/Ⅱは一度通知した後の再設定が必要ですが、離床CATCH Ⅲは再設定は不要など、バージョンにより使い方が異なります。バージョンごとに異なる病棟に配置していただくと混乱やトラブルを避けることができるのでベストです。それが難しい場合は、バージョン識別シール(テプラなどで作成も可能)をベッドに貼付けて、容易にバージョンを識別できるようにすること、定期的な操作説明会を通してスタッフ全員の理解を促すことが必要です。バージョン違いの詳細や操作説明については、営業担当者またはパラマウントベッド営業統括部までご相談ください。

離床CATCHの設定フローを作って運用することで、どんなメリットがありますか?

どのような患者さんにどの機能を使うのかといった離床CATCH設定フローを作成することのメリットとして、下記のような事例があります。

①設定の標準化:熟練看護師から新人看護師に至るまで個々による設定のバラツキがなくなった。どのスタッフでも患者さんに合わせた適切な設定を、悩まず行えるようになった。
②ナースコール数減少:適切なタイミングで適切な機能選択ができるので、不必要なナースコール数が減り、
残業時間も減少した。
③ベッドサイドにおける転倒転落の減少:適切な機能選択ができるようになったので適切なタイミングで介助に入れるようになり、ベッドサイドにおける転倒転落が減った。
④アセスメント力向上:離床CATCH設定フローを使って機能選択の理由を説明できるようになるなど、看護師同士の活発なディスカッションにつながり、アセスメント力が向上した。
⑤インシデント/アクシデント分析に活用:転倒転落が発生した場合の分析も、離床CATCH設定フローを基にして振り返りがしやすくなった。

▶︎事例—新東京病院

離床CATCHの使用を推奨する病棟はありますか?

離床CATCHは転倒転落リスクのある全ての診療科/病棟に有効です。特に優先して活用したい診療科としては、「運動障害、感覚障害に伴って転倒しやすい脳神経外科・神経内科」「病状の回復/リハビリの効果に伴ってADL変化が起こりやすい回復期リハ」など転倒リスクが高い患者さんが多い病棟、「転倒転落した場合のリスク(出血等)が大きい血液内科」、「拘束を避けQOLを考慮したい緩和ケア」などで積極的に活用いただくと良いのではないでしょうか。

離床CATCHについて、より実践的な活用方法があれば教えてください。

離床CATCHを使用されている施設で、下記のような活用事例があります。
①検査での鎮静後の患者さんには「起上り(0秒)」設定をルール化するなど、症状や治療ベースでセンサーを設定している。
②ラインが多い患者さんには「起上り」設定とすることで、患者さんが動いたときにすぐに検知でき、ライン整理に活用している。
③急患などで患者さんの身体状況がすぐに把握できない場合は、暫定的に離床CATCHの設定を「起上り」設定とすることでリスクに備え、患者さんの状況がある程度わかってきたタイミングで設定を見直している。

離床CATCHを導入して、ナースコール数がとても多くなりました。何か対応方法はありますか?

【離床CATCHの設定による対応方法例】
●体重設定が適切かどうか確認してみてください。患者さんの体重より軽い設定にしていると感度が高くなり、鳴り過ぎることがあります。
●起上り0~1秒に設定している場合は、起上り3秒にするなど、検知タイミングを緩くしてみてください。寝返りする際に肩が浮いて起上りで検知する場合でも、3秒設定にすることで鳴り過ぎを抑えることもできます。

【使用/運用面での対応方法例(他施設での事例)】
●どういう状況で鳴っていたのか、トイレ誘導することで減らせるのではないかなど、検知増加の原因を分析し、カンファレンスで対応方法を検討することで鳴り過ぎを抑えることが可能です。
●例えば、1病棟(45床)中、稼働台数を10台以内と決めて運用することで鳴り過ぎを抑えることなどができます。

一方で、離床CATCHによるコール回数が多いということは事故に至るサイン・予兆であるという考え方もできます。安易に鳴り過ぎを抑えることを考えるのではなく、ステーションに近い部屋へ移動させたり、観察強化などが必要ではないか、という視点からの対応も併せて検討してみましょう。

離床CATCHを使用していますが、毎年スタッフの入れ替わりもあり使用方法の理解が徹底されません。使用方法が周知され、院内に離床CATCHを浸透させるにはどうしたら良いでしょうか?

離床CATCHを効果的に活用するためには、機器を正しく使えるようになることが必須です。年度始めには院内で使い方説明会を開催するなど定期的な教育を行いましょう。パラマウントベッドによる説明会や使い方動画の配布も可能ですので、営業担当者にご相談ください。
また、各病棟に機器担当者(主任など)をおいて、困ったときには担当者に相談できる体制を整えておくと、離床CATCHをより効果的に運用することができます。
更に離床CATCHを効果的に活用するには、どのような患者さんにどんな時に使用するのかという判断基準を手順化しておくと良いと思います。多職種で連携し、機器を正しくスムースに使える体制づくりを行うことも重要です。

▶︎使用サポート
▶︎運用サポート

基本となる離床CATCHの設定基準がないため、看護師個々の判断で設定しており、効果的な設定ではないことがあります。どのようにしたら良いでしょうか?

下記リンク先のページを参考に、「離床CATCH設定フロー」を作成されることをお勧めします。どう作成したら良いか分からない場合には、参考例をダウンロードし、まずはそのまま使用してみても結構です。使用していく中で、自院と判断基準が異なるなど、相違点に気が付いたら、その点は自院に合わせてカスタマイズしていけば良いのです。どのような患者さんにどの機能を使うのかといった設定フローを作成することは、熟練看護師から新人看護師に至るまで、個々による設定のバラツキをなくすことができます。患者さんに合わせて適切な設定が行えることになりますので、是非、作成してみて下さい。

▶︎運用サポート

離床CATCHを解除する判断フローはありますか?全床に導入されておらず、一部の患者さんのみで使用しているため、解除するための判断基準を知りたいです。

下記リンク先のページにある「離床CATCH設定フロー」を参考に、その内容を逆に解釈し、離床CATCH設定の条件に当てはまらなければ「解除可能である」と判断ができるかと思います。

▶︎運用サポート

その他に関するQ&A

ベッドから滑ってズリ落ちた場合に転倒とするのでしょうか?報告数のカウントとするのでしょうか?

現場の安全管理者の方々に聞くと、転倒でも転落でもなく、事象として”不明”にしているとか、カウントは“する”“しない”などバラバラで、座りこんでいるのは転倒とみなしているなど、様々な扱いがあることがわかりました。皆さんの施設ではどのように扱っておられるでしょうか。カウントするかしないかでは事故発生数に違いが生じます。重要なことは、自施設では現状をどう判断しているかであり、是か非かの二者択一をすることではありません。
現状を把握するのに、転倒転落の発生率を算出することは重要であると思います。しかし、全国的数値を見ていくとこうした誤差があるのは必然であり、誤差範囲なのかどうかということにもなります。データをどう見るかということが問題です。注射事故のようにプロセスで割り切って判断できないのが、非プロセス事故の転倒転落事故の難でもあることを再認識しましょう。そして、自施設ではどうするかを決めておくことが重要だと思います。

深夜3~5時にかけて患者さんの体動が活発化し、コールが重なることがあります。転倒転落リスクの高い方を優先に巡回しますが、どうしてもスタッフが手薄で対応に遅れることがあります。少ないスタッフで夜間帯を安全に見守るにはどうすればよいでしょうか。

深夜3~5時にナースコールがなるということですが、患者さんが目覚めて何のためにコールを鳴らすのでしょうか。排泄のためでしょうか。また、5時くらいまでは患者さんにはしっかりと寝てもらいたいということもあるのでしょうか。この問題だと思われている内容について、患者さんの生活リズムとケアする側の事情についてなど、さらに議論していくことがまずは必要だと思います。
一方で、夜間の転倒転落対策については、特に重要視して丁寧に対策を講じておく必要があります。夜間の防止対策自体が、全体としての防止対策といっても過言ではありません。夜間に起こっている転倒転落の詳細について事実をデータ化してみることもお勧めします。

当院は複数回転倒患者が多く、何とかして減らしたいと思っています。何か良い対策があれば教えてください。

“このような対策をすれば複数回転倒患者が減ります!”というような、具体的かつ明確な回答は残念ながらありません。しかしながら、「複数回転倒患者を減らしていくため」の施策を考えて見つけることはできると思います。
 
そのためには、「どういう対策をとれば良いか?」という手段の検討にいきなり入るのではなく、まずは一度、「どのような状況で、どのような患者さんが、何をしているときに転倒をしているのか?」「なぜ、複数回転倒しているのか?」を整理して、全体を俯瞰してみることから始めてみてはいかがでしょうか?そのうえで、「複数回転倒患者を“減らす”」のではなく、「複数回転倒患者を“ゼロにする!”」という“ありたい状態(目標)”を設定し、なぜ、その目標に至れていないか、原因をたくさん挙げてみましょう。そうすることで、どこに問題があるのか(なぜ、複数回転倒患者が多いのか?)が明確になり、複数回転倒患者を減らしていくための施策を見つけやすくなりますし、「モノ(ハード)」で解決できるのか、「プロセス(ソフト)」で解決できるのかも考えることができるようになります。

参考までに、ある病院では「転倒転落後のカンファレンス(振り返りを含む)がきちんと行われていないこと」、「勤務交代時に複数回転倒患者の申し送りが全員と共有できていないこと」に複数回転倒発生の原因があると考え、
●転倒転落発生後のカンファレンスのタイミングや内容の統一
●担当看護師個人から個人への伝達ではなく、病棟スタッフ全員で申し送りを行うこと
●複数回転倒患者をスタッフ全員で見守れるよう、リストバンドを装着する
などの対策を立案し、複数回転倒を減らすための取り組みを実施しています。

▶︎問題解決へのアプローチ

認知症やせん妄の患者さんへのケア方法で何か良い事例はありますか?

認知症のケアでは睡眠と生活リズムが大事です。興奮などの精神症状は睡眠と関係があるとも言われています。睡眠時間の減少、昼夜逆転、睡眠の分断などにより生活リズムが乱れて中途覚醒や離床につながり、転倒、せん妄、さらにはBPSDが増えるなど、悪循環になることがあります。ある病院では、眠りSCANという睡眠測定機器を使用して、患者さん一人一人の睡眠アセスメントから、病態に合わせた治療やケアにより睡眠状態の改善につながりました。
具体的には、認知症、せん妄患者さんの睡眠を測定して睡眠障害があることを把握し、薬の調整をすることで、睡眠の質や量を改善させることができました。日々の睡眠状態を可視化、数値化することで、客観的な状況把握と対策実行、薬物治療やケアの評価、せん妄の評価というようにPDCAを回すことができています。患者さんの変化はもちろんのこと、スタッフの観察・アセスメント力、モチベーションアップにもつながったという成功事例となっています。
また、他の施設では夜間の覚醒したタイミングで訪室し、排尿誘導することで転倒事故が減少したという事例もあります。
せん妄、BPSD、転倒を予防するために、睡眠、生活リズムの把握と介入を検討してみてはいかがでしょうか。

▶︎眠りSCAN(パラマウントベッド(株)ホームページ)

コロナ患者さんの転倒転落防止対策は何かありますか?

コロナ患者さんへの訪室は感染対策及び業務負担軽減の上で極力控えたい一方で、転倒転落リスクがある場合は頻回な観察・訪室が必要とも考えられます。できる限り訪室回数を抑えながら、転倒転落のおそれがある際にタイムリーに介助に入るためには、離床センサーや見守りセンサーの導入が効果的です。センサーにカメラ機能があると映像で患者状況を確認できるため、不要な訪室を更に減らすことができます。非接触のセンサーを使えば拘束感を少なくすることができるので、せん妄・不穏の発生リスク低減につながることも期待できます。

▶︎眠りSCAN(パラマウントベッド(株)ホームページ)
▶︎眠りSCAN eye(パラマナビ)

せん妄が発症した場合の具体的な転倒転落対策について教えてください。

せん妄には「過活動型」「低活動型」「混合型」の3分類があります。この中でも特に過活動型は、興奮したり幻想や妄想の出現などがあり、転倒転落の危険性は高くなります。せん妄が発症してしまった場合、その要因を改善または除去するなどして早期に和らげることが大切ですが、それと同時に環境整備も重要となります。ベッド上に立ちあがってしまったり、臥床状態から転落する可能性もあるため、低床ベッドを使用し、最低床高に設定の上、覚醒あるいは起き上がったときなど早いタイミングで検知できる離床センサーを使用しましょう。高齢の術後患者さんなどせん妄リスクの高い方は予めステーション近くの居室にして、術後決まった日数(特に夜間)は離床センサーを必ず設置することをルール化するなどしてはいかがでしょうか。身体を紐で縛るなどの身体拘束はせん妄を助長することがあるため、体につけないタイプの離床センサー(ベッド内蔵型など)がおススメです。

▶︎低床ベッド(パラマウントベッド(株)ホームページ)

転倒転落のうち、睡眠薬を投与されていた事例はどのくらいを占めるのでしょうか?

札幌医科大学附属病院における調査(2012年7月~2015年3月)では、転倒転落944件のうち、睡眠薬を投与されていた事例が511例(54%)との報告があります。

▶︎札幌医科大学附属病院における調査結果石郷友之. 薬剤の転倒・転落への影響~睡眠薬を中心に~. 日本転倒予防学会誌. 2018. Vol.5(1). p.27-31.)

離床CATCHは全国の病院・高齢者施設でどれ位使用されているのでしょうか?

離床CATCHは全国の病院・高齢者施設で約40万台(中継ユニットは約18.6万台)が導入され、使用されています(2023年9月末時点)。

転倒転落防止のために医療安全対策室が把握しておかなければならないデータとして、どのようなものがありますか?

医療安全対策室ですので、事故の発生事実としての転倒転落発生率(病棟等各部署毎と院内全体)が一番重要です。また、転倒転落の実態(これは詳細に5W1Hで、どういう対策を講じていたのか/講じていなかったのかまで)を把握しておくことは、原因特定など事故の振り返りや、改善策を検討していく上でとても大切な情報となります。その他としては、入院患者さんの年齢層、認知症加算をとっている患者さん数などが挙げられるかと思います。看護部と医療安全対策室とが連携してデータを共有できることが、転倒転落対策では重要です。

せん妄患者さんの転倒転落予防について教えて下さい。

せん妄状態になる患者さんは、ほぼすべての方に転倒転落のリスクがあると認識しなければなりません。せん妄状態の特徴について理解しておくことが必要になります。しかし、それ以前に何よりも、せん妄状態を引き起こさないようにケアすることが最も重要です。診療報酬でせん妄に対する診療加算がつきましたが、病院にとって重要なことは、全入院患者さんの転倒転落を予防することです。せん妄患者さんに絞ってリスクアセスメントを実施するなど、全入院患者さんの転倒転落を予防するという観点が損なわれてはいけないと思います。

特性要因図のつくり方を含め、分析方法について教えていただけないでしょうか?

分析方法として、患者さんを中心に据えて考えるP-mSHELL分析などがありますが、特定の事象(問題)に対し要因を分析するには特性要因図が適しています。特性要因図の作り方を簡単に説明すると、まずは事象(問題)に対して考えられる要因を洗い出します。次にそれらの要因をカテゴリー分けし、各要因の因果関係を整理しながら根本的な要因を明らかにしていきます。なお詳細な作り方については、下記リンク先のページ(「転倒転落の個別要因分析」)や「活動レポートVol.2」に記載がありますので参照してみて下さい。

▶︎転倒転落の個別要因分析
▶︎活動レポート