複数回転倒事例“ゼロ!”に向けた
離床CATCH活用の取り組み事例

公立西知多総合病院

公立西知多総合病院_イメージ

公立西知多総合病院

  • 所在地/愛知県東海市中ノ池三丁目1番地の1
  • 手術件数/3,229件(令和3年度)
  • 病床数/468床(ICU 8床、救急病床12床、
    結核モデル病床10床、緩和ケア病床20床) 
  • 看護体制/7:1
  • その他特徴/二つの公立病院が統合し、2015年(平成27年)に
    開院。地域の中核病院としての役割を担っている。
    認定看護師が13分野26名在籍し、チーム医療に力を入れている。
背景

転倒転落発生件数が多く、複数回転倒も課題

    地域の特性として高齢者の入院患者が増加傾向にあり、そのことも影響してか転倒転落発生件数が多いと認識している。複数回転倒も多く、どうにかして減らしていきたいという思いがあった。また、離床CATCHを導入しているものの、正しく使えておらず、鳴らない/無駄に鳴りすぎるといった相反する悩みや、解除したくても転倒が怖くてできないといった悩みを抱えていた。もともと院内で転倒転落ワーキンググループの活動を行っており、より良い取り組みとなるようリハスタッフ含め多職種で取り組んでいきたいと考えていた。

現状把握

 

目標をたてるにあたり、現状を認識/明確にするために、過去のインシデント・アクシデントレポートを一件一件読み解き直し、「現状把握」を行った。この時点で対策として何を行うのかまで決めてしまうと、先入観に引っ張られて低い目標を作ってしまうことがあるため、現状把握に徹するように心がけた。今回、把握したポイントを整理すると以下の通りであった。

  • 転倒リスクが高かったにも関わらず、離床CATCHを設置するなどの転倒転落対策が十分に取られていなかった事例(=アセスメントと対策の紐付けが不十分だった事例)がX%あった。
  • 離床CATCHが設置されていたのに発報しなかった事例(=離床CATCHの使い方を正しく理解して使用していなかった事例)がX%あった。
  • 発報が多くて対応が間に合わなかった事例もX%あった。
  • 全インシデント/アクシデントデータのおよそ80%がこれらに集約されていた。
  • また、一度転倒転落した患者さんの再転倒(さらには複数回転倒)が多いということもデータで明らかになった。
ありたい状態(目標)

複数回転倒を“ゼロ”件に!
駆け付けに間に合わない事象を減らしたい!

より重要なことに注力するために、最初に把握した現状の中から重要な項目を絞り込み、その項目との関連を考えながら「ありたい状態(目標)」をまとめていった。

中でも特に“複数回転倒”に着目し、“複数回転倒”は絶対に無くしたい事例であるとして、【複数回転倒事例がゼロ件になっている】ことを「ありたい状態(目標)」として設定した。当初は、「複数回転倒を50%削減する」という目標を挙げていたが、残り半分の複数回転倒は残っても良いのか?と考えると、「ありたい状態(目標)」としては少し違和感が残ったため、高い目標値ではあったが【ゼロ件になっている】ことに最後までこだわった。そうすることでアクションも明確になりやすく、“複数回転倒”に対する意識も強く持つことができると考えた。目標が漠然としたものにならないよう、実際の再転倒・複数回転倒の「現在の状態」をデータで確認しながら、具体的で明確なものとしていった。

その他、【アセスメント結果に応じた対応策が実践できている】や【病態やADLに変化が生じたときにもアセスメントができている】ということも「ありたい状態(目標)」として挙げ、それらが達成されれば、離床CATCHの適切な設定につながって無駄鳴りが減り、駆け付けに間に合わなくなる事象が減少するだろうと考えた。また、離床CATCHはすべてを100%検知できるわけではないので、【センサーの特性を理解して設定ができている】ということも「ありたい状態(目標)」として設定した。

    ●病院が設定した「ありたい状態(目標)」
  • ① 複数回転倒事例がゼロ件になっている
  • ② アセスメント結果に応じた対応策が実践できている
  • ③ 病態やADLに変化が生じたときにも、アセスメントができている
  • ④ 離床CATCHの特性を理解して設定ができている
原因・理由

なぜなぜ分析で真の理由を探す

「ありたい状態」に対して、「今その状態が達成できていない理由」を以下のように考え整理した。理由を考える際には、なぜ?なぜ?なぜ?を繰り返しながら、なるべく真の理由に行きつくように深掘りすることと、「注意を怠ってしまっていたため」など、気持ち(意識・マインド)の部分に理由が落ちてしまわないように、システムやハードに目を向けていくことを意識して考えた。

    【転倒事例の振り返り】

    ⚪︎行動に至った理由、センサーが鳴らなかった理由など、原因分析が深掘りできていない

    ⚪︎転倒転落後のカンファレンスができていない
    (損傷レベル3a/3bのみ転倒転落後のカンファレンスを実施していた)

    【アセスメント/モノの使い方】

    ⚪︎元々使用していた「転倒転落予防クイックチャート」はオーバートリアージの傾向があり、対策が不要な患者さんにセンサーをつける等、鳴りすぎる要因となっていた

    ⚪︎アセスメント結果をもとに適切な対策方法を考えることができていない

    ⚪︎再アセスメントするタイミング/患者が分かっていない

    ⚪︎転倒予防具の選択方法、使い方(特性)が分かっていない

どのようにして達成するか(戦略)/実行

問題解決に有効な施策を見つける

  • 看護師/リハ職の方が混じって、付箋にたくさんアイデアを書き出した。
  • 多くのアイデアを収束させるにあたっては、「実現性が高いか低いか」を横軸に、「効果が高いか低いか」を縦軸に取った二次元のマップにその付箋を貼り分けた(図)。
    そうすることで、「ありたい状態」が実現できそうな有力なアイデア(すなわち「実現性が 高く,効果が高い」と見込まれるアイデア)に絞り込んでいった。
  • アイデア収束のための二次元マップ

    図:アイデア収束のための二次元マップ

  • 具体的には以下の戦略施策を実行することにした。
  • 情報共有のタイミングを院内で統一し、カンファレンスを見直しする(看護職全員共有)
  • 特にハイリスク患者のカンファレンスは多職種で実施し、ADLの変化を共有する
  • ハイリスク患者(複数回転倒患者)にリストバンドを装着する
  • ハイリスク患者を訪室しやすい環境づくりをする
  • 元々使用していた「転倒転落予防クイックチャート」を見直し、予防対策の標準化を図る
  • L字柵の使用をリハ職と一緒に検討する
  • センサーの取り扱いに長けたコアナースを育成する、センサーベッド体験を行う
成果物(アウトプット)

スタッフ間の認識を揃える資料を作成

  • アウトプットとして、「転倒転落予防具の種類と特徴/離床CATCH使用時の注意点(図)」「転倒転落予防フローチャート(図)」を作成した。
  • 予防具一覧、転倒転落予防具の種類と特徴

    図:転倒転落予防具の種類と特徴

    予防具一覧、転倒転落予防具の種類と特徴

    図:離床CATCH使用時の注意点

    予防具一覧、転倒転落予防具の種類と特徴

    図:転倒転落予防フローチャート(表面)

    予防具一覧、離床センサー設定

    図:転倒転落予防フローチャート(裏面)

  • 「転倒予防具の種類と特徴/離床CATCH使用時の注意点」は、表裏印刷し、パソコンカートにぶら下げ、いつでも見られる状態にした。【どういう時に使うと良いのか】【使用に向く患者/不向きな患者】を明確に示した。
  • その他、「アセスメントのタイミング(病状変化時)」「介助バー(L字柵)対象者」「転倒ハイリスク患者」についても、文章で定義を明確化し、看護師が迷わないようにした。
成果(アウトカム)

 

  • 複数回転倒患者は、取り組み実施前後で減少傾向(3.7%減)
  • 対策物品があっても活用できていなかったが、適切なアセスメントができるようになり、介助バー(L字柵)の使用率が徐々に増加した
  • インシデント/アクシデントレポートに、ナースコールの発報履歴を確認のうえ、センサーが発報(検知)しなかった理由などの情報が記載されるようになってきて、転倒転落発生後の振り返りができるようになった。
今後の課題など
  • 取り組み後も転倒転落率は増えている状況。特に入院初期(1~3日以内)での転倒転落が急増してしまった。
  • 元々使用していた「転倒転落予防クイックチャート」はオーバートリアージの傾向があったので、「転倒転落予防フローチャート」ではその点を修正した。チャートで認識を揃えたうえで、担当看護師がアセスメントに基づき必要に応じて対策を1ランク上げることとしたが、転倒転落率が増えているのはその判断が実施できていないこと、あわせて、脱水/発熱/疼痛などの入院患者が、輸液や対症療法で症状が改善した際、ADL拡大に対する再評価ができていないことが原因ではないかと考えている。
  • クイックチャート改訂、再評価のタイミングと適切な予防策、多職種との連携など、継続して検討する必要がある。
  • センサーの設定が、起き上がり「0秒」でも間に合わない事例に対しては、「先取り看護」や「転倒してもケガをしない対策」を立てることを合わせて検討していく。

RoomT2より

「複数回転倒」という重要課題に対して、「50%削減」ではなく、「ゼロ件になっている」と、ありたい状態(目標)を設定したことについて、とても高い目標値ではありますが、そこに最後までこだわれたことは非常に素晴らしいことだと思います。「●●%削減する」という目標設定は、定量的であり、一見すると良い目標設定のようにもみえますが、「数字を下げること」を目標にしてしまうとそこに意識が向いてしまい、決して間違ってはいませんが、成果に結びつきにくくなってしまいます。「下げる」のではなく、「無くす(ゼロにする)」と目標を定めることで、そのためにはどうすれば良いのか、を具体的に考えられるようになりますので、その点がとても良かったと思います。