目標管理のお悩み解決

講師の高田氏の目標管理の考え方は、みなさんがお持ちの看護の常識とは
離れているように感じるかもしれません。
同じ「目標管理」という言葉ですが、全く新しいものと思って読んでみてください。

  • 問題解決へのアプローチ

    目標管理におけるよくある悩み

    「目標を立ててほしい」と言われても、自分では何が正解なのかわからない……。
    ここではよくある問題・悩みを取り上げ、異なる角度からの考え方を示していきます。

  • そもそもやる気になれない

    本当に面倒で、なかなかやる気が出ません。毎年、目標管理の時期が憂鬱です。そもそも、「目標を立てて達成する」というやり方が好きではありません。
    目標管理を何年かやりましたが、本当に嫌いです。看護師の仕事の中で目標管理が一番嫌いで、全くやる気が起きません。何でこんなことをやらなければいけないのかと思います。
    目標管理のシートを書いて提出するようにと言われているのですが、難しそうです。もともと、目標を立てていろいろするタイプではないので、やる気が出ません。

    こう考えて解決

    目標を立てるのは、「自分の頑張り」を「成果」にするためだと知っておく

    • 特定のことに集中すると大きな成果が生まれます。
    • 特定のことを目指すと、今までの延長線では生み出せない成果が生まれます。

    この目標項目でよいのか、ほかにもっと重要なことがないかが不安

    目標を3項目立てましたが、まだ何か重要なことが抜けているんじゃないかと不安です。
    本当にこの3項目でよいのか自分で自信がもてません。毎年、自分が正しいのか不安です。
    目標は3つくらい書きなさいと言われていますが、どうやって3項目を決めるのか、自分が考えることが正しいのかわかりません。

    こう考えて解決

    論理的に系統立ててやる

    • 自分の力を振り絞って「全部出す」ということを、しっかりと時間をかけてやりましょう。
      1. (1)まずは、何がありうるか、思いつくことを全部出します。
      2. (2)出したことをグループ分けして、同じようなものを統合して、整理します。
      3. (3)全体が見えたら、最後に重要なことを選びます。

    達成する方法が思いつかないので、高い目標を立てられない

    高い目標を立てようとしますが、達成計画が思いつかなくて立てられません。
    「高い目標を立てる」と言っても、方法がなければ意味がないですから、できることには限界がありますよね。
    高い目標を立てる人はすごいと思います。達成方法がすぐに思いつくのですね。

    こう考えて解決

    「達成する方法」は後で考える

    • 高い目標を立てるとなると、知らないうちに目標が「達成方法を思いつけるかどうか」に引っ張られてしまいます。 右のフレームワークの要領で考えるとよいでしょう。
      1. (1)まずは、達成方法は心配しないで、高い目標を設定します。
      2. (2)高い目標ができたら、それを何とか達成する方法をじっくりと考えます。

    やることをしっかり決めて頑張っているけど成果が出ない

    前回は、「教育プログラムをつくる」という目標でやりました。プログラムをつくったのはつくったのですが…。
    「カンファレンスを100%やる」を目標に取り組みましたが、情報共有が十分にできていないと感じることが相変わらず多いです。
    とにかく「決めたことをやる」ということですよね。明確になったので、やることはやります。

    こう考えて解決

    「やること」を目標としない

    • やることを決めてそれだけに集中すると、その作業を完了しても、もともと考えていた本来の目標を達成できるとは限りません。
    • 「作業をすることにコミットする」のではなく、「目標にコミット」します。
    • 「やること」を決めるのではなく、「目標」を明確にしましょう。
  • 問題解決へのアプローチ

    陥りがちな悪い目標設定

    転倒転落防止に向けた取り組みにおいて成果を上げていくためには、目標設定がとても重要です。
    ところが、実際に書き出してみると的確な文章にまとめることは意外に難しく、お悩みの方も少なくないようです。
    そこで、陥りがちな悪い目標設定と、その対策(コツ)を見ていきましょう。

  • 「目標」と、目標を達成するために「やること」を混同してしまう

    (悪い目標設定の例)
    「教育プログラムをつくる」「カンファレンスを100%やる」

    これらは目標を達成するために、「やること」です。やることを決めてそれだけに集中すると、その作業を完了しても、もともと考えていた目標を達成できるとは限りません。「目標」と「やること」は区別すること。「やること」を「目標」にしないようにしましょう。

    レベルが高くないといけない気がして、長い文章の目標を書こうとする

    (悪い目標設定の例)
    「ヘルシーワークプレイスを実現し、看護のやりがいが向上し、心身の疲労が減少する」

    目標が短いシンプルなものにならないときは、いくつもの目標が混ざっていることが多いようです。

    「仕組みをつくること」を、目標としてしまう

    (悪い目標設定の例)
    「マニュアルが完成している状態」

    仕組みをつくるのは、その仕組みによってうまくやりたいことがあるはず。未来へタイムトラベルをして、何をどのようにうまくやっている状況なのかを思い描き、それを目標として書きましょう。

  • 問題解決へのアプローチ

    よい目標の5条件

    転倒転落の分野では、目標を設定し、それを達成することがそのまま問題解決に直結します。
    つまり、よい目標を設定することが、成果につながりやすくもあるのです。
    これまでの情報をおさらいしつつ、よい目標の5条件を見ていきましょう。

    1. 魂がこもっていて、自分がやる気になっている
    2. やりがいを感じられるものになっている。

      「これは私に任せて!」という気持ちになっている。

      その目標を達成できるように頑張ろうと思える。

    3. 重要なことを扱っている
    4. 抜け・もれなく、思いつくことを全て書き出してから選んだ項目である。

      「患者にとっての価値」「財務の健全性」「仕事の仕方と仕組み」「人材と組織」の4領域で考える※1

      組織(上層部)の方針や目標と一致している。

      自分の問題意識や想いを反映させている。

    5. 高いところを目指している
    6. 「できること」ではなく、「ありたい状態」が示されている。

      高い基準で考えている。

      まずは目標を考え、達成方法やその評価方法は後で考える。

    7. 目指す状態を具体的で明確に描いている
    8. 「やること」を目標にしていない。

      現状と何が違うか明確である。

      進捗と成果がチェックできる。評価できる。

    9. シンプルでわかりやすい
    10. 違うことが混ざっていない。

      意味が不明瞭な言葉や表現を使っていない。

    POINT

    今後目標を立てるときには、よい目標の5条件を満たしているか見直してみてください。

    スタッフナースのための6ステップ目標管理の書影

    このページは、高田誠氏の著書
    「スタッフナースのための6ステップ目標管理 ~看護の想いと頑張りを成果にする方法」
    を参考に作成されました。

    書籍の情報はこちらをご覧ください。
    https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3924

    高田 誠(2021):スタッフナースのための6ステップ目標管理――看護の想いと頑張りを成果にする方法,日本看護協会出版会

    ※1:「患者にとっての価値」「財務の健全性」「仕事の仕方と仕組み」「人材と組織」の4領域について、詳しくは書籍をご覧ください。