活動報告

ベトナムのハイフォン国際病院で
RoomT2セミナーを開催しました!

2024年1月10日~11日、ベトナムの第4の都市ハイフォンにて、RoomT2セミナーを開催しました。ハイフォンは、首都ハノイから100km程離れた北部最大の港湾都市です。今回のセミナーは、PARAMOUNT BED (THAILAND) CO., LTD. のサポートを受けながらの実施となりました。

セミナーの会場となったのは、ハイフォン市にある最大の民間病院「ハイフォン国際病院」です。同グループ病院は、全4病院/1,500床程を有しており、さらに今後はベトナムの高齢化を見据えて、ハイフォン市内に介護施設や高齢者用病院などを展開予定です。そうした中、「転倒転落」については、これから取り組んでいくべき重要課題の一つと認識されています。そこで今回は、看護師教育に焦点を当てた転倒転落セミナー開催のご要望を受け、2日間の日程で開催することになりました。

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  • 『「KYTの実践」リスク低減を考える能力を高めるために』

    今回のセミナーのタイトルは『「KYTの実践」リスク低減を考える能力を高めるために』。午前は最初に、RoomT2代表の杉山から「どのようにしてインシデント・アクシデントは発生するのか?」、「リスクとは何か?」、「医療従事者の介在しない“非プロセス型の事故”とは?」など、転倒転落事故の考え方についての話題を提供。その後「リスクを予見する」という観点で、転倒転落と非常に相性の良い「KYT(危険予知トレーニング)」について、その考え方ややり方(ステップ)などをお伝えし、演習も行いました。

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    午後は、グループ毎に分かれ、院内のリスクと思われるシーンを実際に見つけてきていただき、危険ストーリーを考え、基礎4ラウンド法に則って目標設定までしてもらいました。全グループから議論した内容をプレゼンテーションしていただき、プレゼンテーションの最後には指差し呼称、タッチ・アンド・コールによって皆で確認する場面も。各グループが予見したリスクについて、参加者全員で共有し合いました。

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    グループ毎に、リスクのあるシーンを見出し、ストーリーを考え、基礎4ラウンド法に則って目標を設定しました。

    セミナーの最後には、RoomT2副代表の奥から、世界で最も高齢化率の高い日本における転倒転落の実情や課題感について共有を行い、パラマウントベッド(メーカー)としてどのような活動を行っているのか、RoomT2の取り組み、物的対策の考え方などについて話をしました。

    こうしてハイフォンでのセミナーは、盛会のうちに幕を閉じました。2日間で合計197名の病院スタッフの皆様にご参加いただき、当初想定を超える大規模なセミナー開催となりました。

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    セミナーの様子は、ハイフォン国際病院のFacebookでも紹介されました。

    ※右の二次元コード、または画像のリンクでご覧いただけます。

  • RoomT2代表 杉山の所感

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    研修では、「KYTの実践」をテーマに講義と演習を行いました。熱心に研修に臨んでくれて、想定外の効果的な演習ができ、驚きでした。決して転倒転落対策備品が揃っているわけではなく、医療や看護体制が国として整っているわけではありませんが、KYTを通じての問題解決や、業務の改善(5S的ですが)、患者のとらえ方については、演習で一定に理解されたと自負しています。今後の実践を望みたいです。

    極短い期間でのスポット的な私の個人的な感想ですが、病院見学や研修を通じて2点の印象が残りました。

    1つには、ITの進化が医療界でも進んでいることであり、日本の全体状況よりも進んでいるのかもしれません。医療や看護体制は、現状としてみるならば、日本の約50年前のような状況もあります。例えば、入院をすれば家族が必ず付き添い、患者の療養上の世話(清潔やトイレ介助、食事介助等々)をしていることです。入院ベッドの横には長椅子があって、そこに付き添い家族は寝泊まりして世話をします。家族には病院から食事の提供もあります。病棟に事務職はいないので、入院時の事務処理すべて、薬や医療材料等の搬送も看護師の仕事です。

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    それらをみれば、日本の約50年前の状況と思いがちですが、社会背景が違います。ITの進化で、日本がたどってきた年月ではなく、あっという間に日本を超えていくことが予測されます。情報システムの発展には驚かされるものがあります。看護師は日本と同じような転倒転落の患者アセスメントシートを使用していました。

    そしてスタッフが若くイキイキしていました。あと数年でベトナム人口は1億になると聞きました。タイを遥かに超えます。産科病院と小児科が中心になっています。その一方で、高齢化に対する介護施設の構想も着々と進められていました。

    2つには、患者からの要望やクレーㇺに対する対応の仕方です。民間病院としては、住民に選ばれる病院になるということが命題になるので、患者からの評判が重要です。ですから、病院のスタッフルームには、病院グループのCEO(最高責任者)への直通連絡先が表示されていました。クレーム等はまず最初にCEOに届くのです。 日本では担当者につながりますが、当該病院のCEOの方に聞いたところ、それでは担当者の判断が入るので ダメだと言われました。直接患者からの声をCEOが受けて、院内へ指示を下すということでした。ガバナンスの在り方、とらえ方が日本の現状とは異なると思わされました。

    現状や、発展していく中での問題は必ず起きてくるでしょう。物事は諸刃の剣です。生活も風土も制度も異なる医療や看護のもとで、自分たちは何をあるべき姿として追い続けていくのか、自分自身の足元を見つめ直す機会になったことは間違いありません。

  • 【編集後記】

    日本の高齢化率は2023年時点で29.1%ですが、ベトナムの高齢化率は2022年時点で9.0%と、およそ3倍以上の違いがあり、入院されている患者像もだいぶ日本とは異なる状況でした。そして、日本と同様に、転倒転落対策に取り組むことで、病院に対するインセンティブが働くことは特別なく、米国のような、ペナルティが働くこともない状況下ではありますが、SNSでの病院への口コミ/評判や、他の民間病院との競争/差別化の観点などから、「質の高い完璧な医療を提供する」ために、「転倒転落」も病院の責任として取り組むべき課題の一つである、と強い認識を持たれていたことは、とても印象的でした。

    一方で、病棟の看護師の方ともお話をさせていただきましたが、

    ・高齢者より若い患者の転倒転落が多い(動けると思って動いてしまいがち)

    ・ベッドサイドでの転倒と共に、シャワー室とトイレが一体になっていることもあり、床面の濡れによるトイレ内での転倒も多い(手すりは基本無い)

    など、転倒転落の実情も現場で知ることができました。
    RoomT2では今後も日本国内のみならず、国外でもできることを模索しながら、今回のようなセミナー開催含め引き続き“転倒転落による傷害ゼロ”を目指して活動していきたいと思います。

    RoomT2副代表/パラマウントベッド(株)マーケティング部/転倒予防指導士 奥 俊介