RoomT2オンラインワークショップを開催
2021年12月4日と2022年1月15日の両日※「ディスカッションを通し、転倒転落の改善策を探る~他施設と課題や対策を共有し、新たな秘策を見つけ出そう~」と題したオンラインワークショップを開催しました。続くコロナ禍、年末年始の開催ではありましたが、オンラインということもあり、全国から2回合わせて計24病院56名の方々にご参加いただきました。
※2回とも同内容
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組織でこそ実現できる5つのあるべき姿
RoomT2 設立代表
パラマウントベッド㈱
主席研究員 杉山良子RoomT2では、転倒転落に対する「あるべき姿」として左の5点を掲げています。以前はどのような人がどのような状況で転倒転落を起こすのか現状把握に努めてきましたが、これからはそうした患者に関わる私たちがどのような医療の姿を提供していくのかが求められるようになると考えています。
この5つのあるべき姿は、看護職のみならず病院組織全体として、チーム一丸となって取り組んでこそ実現できるものです。組織としてのケアをどのように開拓していくのか、皆さまもぜひ視点を一歩広げて考えてみてください。 -
目標の決め方・達成方法の考え方
㈱オーセンティックス
代表取締役 高田誠 氏成果を上げるためのプロセスは、
1.しっかりとした現状把握と今までの活動評価
2.焦点を絞った目標の設定
3.解決方法の情報収集と活動の計画化
この3ステップです。なかでも解決方法を考えるうえでは、情報収集が鍵となります。効果的な解決策を考えるには、まず情報を集めることが不可欠です。RoomT2は、まさに情報を集めるための場です。そのような意識でRoomT2を活用していただきたいと思います。
サポートツール「問題解決へのアプローチ」もご参照ください。
「計画立案プロセスシート(上図)」も無料でダウンロードいいただけます。
「計画立案プロセスシート(左図)」も無料でダウンロードいいただけます。 -
事例紹介:「成果を上げる計画立案プロセス」を活用した転倒転落対策に挑戦中
公立西知多総合病院では「成果を上げる計画立案プロセス」シートを活用しながら転倒転落対策に取り組まれています。シート作成までの流れを簡単にご紹介しましょう。
- ①作成は現在の状態の分析からはじまります。現状を数字でみるのではなく1件1件の中身を読み解きながら「ありたい状態」を絞る作業を行いました。
- ②当初「複数回転倒を50%削減する」案もありましたが、議論の結果「複数回転倒は仕方がないという考え方では意識が薄くなる。高い目標だがやってみよう」ということで「複数回転倒をゼロにする」という目標が定まりました。
- ③今できていない理由を自由にあげ、できないことの真の理由を深掘りしていきました。このとき意識やマインドなど気持ちの部分に理由を求めるのではなく、システムやハードに目を向けることで、徐々に理由を明確にしていきました。
- ④参考になる情報としては「以前このような取り組みをしていてうまくいった経験がある」という話や、「一部の病棟では、こんな取り組みも実践している」などが院内より得られました。併せてRoomT2からも過去事例やメーカーとしての視点などをご紹介いただき、考えの幅を広げました。
- ⑤戦略を模索するにあたっては、枠を設けずにアイデアを出すことがとても重要です。看護職とリハ職とでアイデアをたくさん出し、その中から実現性も効果も高いアイデアに絞り込んで戦略を練り上げていきました。
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ワークショップ:課題や対策を共有し、新たな秘策を見つけ出そう
興味のあるテーマ毎に少人数のグループに分かれて、ディスカッションしていただきました。各院内での取り組み事例を紹介すると同時に新しいアイデアも検討。成果を上げていくための大切な鍵となる情報収集を行いました。
- スタッフの意識改革
- 色々な組織を巻き込んでスタッフ教育を年2回実施している。
- 医療安全と病棟担当が、転倒転落リスクのある患者をピックアップ→双方で対策について意見交換を行い1か月後にフォローアップ→体験型研修プログラムを実施してスキルアップ・意識向上につなげている
- できていることや、うまくいった事例をフィードバックすることで、他の取り組むスタッフも「自分達も上手くいくかもしれない。やってみよう」という気持ちになり、ポジティブに取り組むことができるのではないか。
- 病棟でリーダーシップを取れる人を選定、教育してはどうか。
- 転倒転落報告の強化月間を設ける、報告が多い部署を表彰するなどしてやる気にさせる。
[取り組み事例]
[アイデア]
- 多職種連携
- 月に1回、転倒転落をテーマにリスクマネージャー会議を行い、リハビリ中心のラウンドを実施して全員でリスクを見直している。職種による強みが活かされている。
- 簡易かつ具体的なフローを作成して介護職員でもわかるようにしている。
[取り組み事例]
- 身体拘束を減らす
- 数年前から早期に抑制を解除する取り組みを行っており、徐々に抑制率が下がっている。
- 患者の状態を見える化。リスクによってナースコールボードやベッドサイドに「青・黄・赤」の色分けをしている。
[取り組み事例]
- アセスメントシートと看護計画の内容・手段
- 転倒した患者は再評価してベッド一覧に転倒危険マークをつけている。他職種や看護助手にも好評である。
- 現在のアセスメントシートは複雑で有効な対策に結びつく内容になっておらず、現場のモチベーションを下げている可能性がある。項目を見直し簡潔にまとめるとともに効果につながる内容へ変更したい。
- 転倒転落の翌日には必ず多職種でカンファレンスを実施し、結果をアセスメントシートや看護計画に結びつけることを徹底したい。
- 多職種連携でADLの変化を把握しアセスメントのタイミングを見逃さないようにしたい。
[取り組み事例]
[アイデア]
- 認知症/せん妄患者への対応
- 認知症認定看護師からの指導、アドバイスを取り入れたい。
- 患者の特性や転倒転落に対する指導方法を統一化したい。
- ユマニチュードを実践したい。
- リハビリなど多職種でのカンファレンスを業務の一環として設けたい。
[アイデア]
- 物的対策の有効活用
- センサー類が多種ある。それらをうまく活用した結果、転倒転落は減少した。
- 医療安全推進室やリンクナースで転倒転落ラウンドしセンサーの設定や評価を行っている。
- インカムを活用していて効果あり。
- 眠りスキャンのデモ機を試したところ、早く駆けつけられとても有効だった。
- 超低床ベッドの使用は、地域包括病床ではとてもよい。
- 人海戦術では限界に来ている。モノを活用して重傷事例を減らす対策を考えたい。
- センサーに関してフローチャートを使用することで手順を統一化したい。
- センサー設置後のシミュレーションを確実に行いたい。
[取り組み事例]
[アイデア]
- ベッド周辺の環境整備
- トイレに行くときの動きを考え、カーテンや部屋の配置を検討している。
- すきまを作らないように、ベッドからの出入り口をひとつにしている。
- 認知症チームと一緒にケアの見直しができるようにしたい。
- PTなどとカンファレンスを実施して患者に合った環境整備を行いたい。
[取り組み事例]
[アイデア]
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高田氏総括
課題を具体化することがポイントです。「これを無くす」と絞り込む、「何が足りないのか」を明確にする、「こういう組織になりたい」を具体的に描くと、やるべきことがハッキリします。素晴らしい議論でしたので後はもう動かすのみです。ぜひ皆さん強い意気込みでアクションを起こしてください。
杉山氏総括日々の日常的な小さな積み重ねこそが、転倒転落防止の道筋になっていきます。私たちは全てができるわけではありません。「何が今できるか」をしっかり見据えて、それに対してがむしゃらに取り組んでいく。この熱意こそ、実は最も必要なのだなと思います。