活動報告

4年目を迎えた
転倒転落事故防止に向けて取り組んで行きたいこと

RoomT2設立代表者 杉山良子

  • RoomT2が目指す、5つの目標

    転倒転落に対する
    あるべき姿

    • 転倒転落による
      傷害をゼロにする
    • 患者の尊厳を守る
    • ADLを維持し、
      ⾃⽴を⽀援する
    • 患者・家族が
      納得し安心できる
    • 組織としての
      効率性を⾼める

    私たちは「転倒転落に対するあるべき姿」として、新たに5つの目標を打ち出しました。その1つは「転倒転落による傷害をゼロにする」。もちろん普通の元気な方でも転ぶことはあるわけですから、ゼロにはできないわけですが限りなく事故を減らしていく。そのなかでも、特に、軽度から中程度の治療では回復しないような傷害、特に頭部外傷を防止しなければなりません。また骨折では、大腿骨骨折や頚部骨折を減らす、ゼロにすることを考えなければなりません。

    2つ目の「患者の尊厳を守る」というのは、不要な身体拘束などの過剰な抑制をなくすことです。命の危険があるようなケースは別ですが、一旦、拘束をしてしまいますとなかなか解除が行われない。ですので、切迫性、非代替性、一時性という身体抑制の原則を守るための、細かなルールづくりが患者さんの尊厳を守ることにつながります。

    3つ目は「ADLを維持し、自立を支援する」ということです。ケアは重要ですが、患者さんが自分の力で、ADL(日常生活動作)を行うということが大切だということも意識しなければなりません。

    そして4つ目には「患者・家族が納得し安心できる」ということを目標として掲げています。どうしてこのような処置が必要なのか。センサーや車椅子、さまざまな事故防止器具が、どのように必要なのかを伝えることで、患者さんやご家族の、納得や安心が得られます。それは医療従事者のアカウンタビリティ(説明責任)でもあるんですね。

    そして5つ目は「組織としての効率性を高める」ということです。例えば、ケアをすると言っても、個々の看護師の資質や、やる気にばかり頼ることはできません。チームで一定のルールの元に判断していくこと。共通の目的のために省力化することが求められます。看護師がやるべきことと、やる必要がないことが明確化され、組織のなかで、うまく業務配分をすることが重要です。

  • 目標を達成していく方法の構築

    第3期から第4期を迎えるにあたり、前述の5つの目標達成に向けて、それをさらに具体化するための方針をまとめました。

    まず「現在の状態」を把握し「できていない理由」を抽出します。それらを元に「達成する方法」を構築していくという手順です。

    倒転落事故防止の現状は、「看護師の勘や経験、努力に依存しすぎているという報告もありました。ある優秀な看護師が活躍して、事故を未然に防止するこのは素晴らしいことですが、そのノウハウが、多数で共有しシステム化されなければ。優秀な人が疲弊してしまいますね。そのためにはエビデンスに基づいたソフトやハードも必要になってきます。

    目標を達成する方法

    • 『転倒転落研究会(RoomT2)』の活動を通して、
      転倒転落について皆で語り合い、問題を解決する場を提供する

      • セミナー開催
      • Webでの情報発信
      • 成果発表
      • エビデンス作り

    • 転倒転落についてのノウハウ(ソフト)をパッケージ化(ナレッジ化)する

      • 運用手順作成
      • 運用手順の横展開(ソフト提案)

    • 理想の転倒転落対策製品(ハード)を提⽰する

      • 新たなハードの開発/提案
      • Webでの情報発信
  • 情報を活用するために

    例えば、電カル(電子カルテ/電子診療録 medical record)が導入されたことで、ドクターを含めた医療関係者がチェックすべき項目も多くになっています。これは大変な労力なわけですが、ここには、転倒転落による傷害を防止するための情報が多数記録されているわけです。患者さんにどのような傾向があるのかという情報から、どのような事故の危険性があるのかを読み取ることもできます。医療サイドが、どのような処置をしたか、あるいはしなかったか、という記録は、残念ながら、まだ十分に活用されているとは言えません。

    国際的にもJCIでも推奨している転倒転落の事故アセスメントシートは、多くの医療機関で作成しています。看護師もチェックを繰り返していますが、それをどう対策に結びつけるかという活用ができていないのが現状です。

    防ぐことのできる事故を防ぐ。そのためには、今後、私たちRoomT2でも、このような現状にも目を向けていきたいと思っています。

  • 設立代表者 杉山良子

    日本赤十字武蔵野短期大学看護学科卒業。武蔵野赤十字病院に看護師として勤務。神奈川県立看護教育大学校教育学科入学。1999年より武蔵野赤十字病院看護部門の看護安全委員会の委員長。NDP(日本における医療のTQM実証プロジェクト)に参加する病院メンバーとなり、同時にNDPの医療技術班メンバーとなって、NDP活動にかかわる。2013年4月より現職。