事例

離床CATCH付ベッド導入事例

医療法人社団 誠馨会 新東京病院

離床CATCH付ベッド導入事例_イメージ

医療法人社団 誠馨会 新東京病院

  • 所在地/千葉県松戸市和名ヶ谷1271番
  • 手術件数/4,047件(2018年度)
  • 看護体制/7:1
  • 看護補助体制/25:1(夜間 100:1)
  • 救急指定/松戸市二次救急告示病院
  • 年間救急車受け入れ台数/5,071台 (2018年度)
  • その他特徴/ロボット手術機器(ダヴィンチ)導入、新棟を増築し消化器内視鏡センターを拡充予定。ハード面での資源の活用、ラダー教育や委員会・ワーキング活動を通して医療(看護師)の質向上を目指している。
対策状況

離床CATCH付ベッド導入でアクシデント減少

  • 一般病床全床を、離床CATCH付ベッドに
  • リスクマネージャーによる使用方法の教育
  • 4時間業務分析、アセスメントの分析
  • 全ベッドにナースコール中継ユニットを設置
  • 転倒転落予防モデルナースとして認定証を授与
  • 離床CATCH設定フローの作成析
背景

新築移転の増床時に対策強化

2012年までは、離床センサーは複数種類を状況に応じて使用していた。しかし数に限りもあり、どの患者にどのセンサーを付けるべきかを考える必要があったり、看護師のラウンドも頻回に行われていた。そこで同年12月の新築移転時に、一般病床全ベッドに離床CATCH付ベッドを導入。ナースコールへ通知する中継ユニットも全ベッド数分を配備した。これによりセンサーが足りない状況が解消され、“センサーを使わない患者の選別”が行えるようになった。センサーを選ばなくて済む環境は、看護師にとって理想的状況となった。

新築移転の増床時に対策強化_イメージ
課題

離床CATCHの無駄鳴り、看護師のアセスメント能力差

  • 転倒転落防止を優先し厳しめの設定にした
  • 離床CATCHの無駄鳴りが増加
  • 対応に費やす時間と負担が増えた
  • 離床CATCHが鳴ってもすぐ対応しない
  • 看護師のアセスメント能力に差が生じた(設定のばらつき)

離床CATCH導入以降、看護師のラウンドの回数が減る一方で、転倒転落を防ぐことを優先して厳しめの設定を行ったために、離床CATCHの無駄鳴りが多発した。そのことにより対応に費やす時間が日常業務内の1/3を占めるようになった。また看護師個々人のアセスメント能力(知識と技術)の差が生じていることも分かり、熟練看護師から新人看護師に至るまで「個々人による設定のばらつきをなくすこと」が課題として浮上した。

対策

24時間業務分析を行い、設定フローを作成

モデル病棟を設け看護師の「24時間業務分析」を行い項目出しを行なった。その上で、全病棟の看護師を交えてディスカッションを繰り返しながら看護師のアセスメント能力差をカバーするために「離床CATCH設定フロー」を作成。また設定フローだけでは対応できない事例もあることから応用編のノウハウ集も作成し活用した。

「24時間業務分析」から分かったこと
  • 看護師がベッドサイドにいるとき、家族の来院時、不要と判断できる場合には、離床CATCHをOFFにする
  • 離床CATCHが頻繁に鳴るときは、設定を再検討する 
「24時間業務分析」から分かったこと 「24時間業務分析」から分かったこと
  • 看護師のアセスメント能力差をカバーするために、離床CATCH設定フローを作成し活用する
離床CATCH 設定フロー
結果

転倒転落発生率1.66‰、損傷発生率0.01‰を達成

「離床CATCH設定フロー」の導入後、3b以上のアクシデントゼロを10ヶ月間継続した(過去最長継続)。その後、一件、「予期せぬ転倒事例」が発生したが、センサーはきちんと鳴り、看護師もすぐに駆けつけていた。その後も設定フローをベースに適切なアセスメントができており、転倒転落発生率は下がっていった。なにより設定方法の考え方、新人看護師への教育・浸透の機会としても有効に使えている。今まで感覚で設定していたものが可視化されたことにより、自分の感覚の正しさが確認でき、設定条件の理由を説明できるようになった。フローがあることで、転倒転落が発生した際も分析が可能になり、病棟間での設定の考え方の差異など、情報が共有できるようになった。また、業務改善については、ナースコール・センサーコールが10%減少し、残業時間も減少した。「離床CATCH設定フロー」の導入前後において、病床稼働率や看護必要度では大差は認めず、また転倒転落発生率や損傷発生率の低さも維持していることから、看護師の業務負担の軽減が図られたと考えられた。

転倒転落発生率1.66‰、損傷発生率0.01‰を達_イメージ
ポイント
  • 全病棟看護師を交えてのディスカッションが改善活動の推進につながった
  • 状況に応じたセンサーのON/OFF、再設定のルール化が、無駄鳴りを減らした
  • 「離床CATCH設定フロー」の運用により、離床CATCH設定の標準化が可能になった
  • 離床CATCH設定フロー」の運用により、設定理由などが共有され、看護師全体のアセスメント能力が向上した
  • 設定判断などの情報の共有により、業務効率が改善された
今後の目標と方針
看護師の経験値による基準づくりをさらに深化させ、患者目線からの良質な療養環境を実現

離床CATCHの設定を厳しめにしてしまうと、転倒転落の予防には役立っても無駄鳴りによる看護師の業務負担につながるため、離床CATCHの活用基準や設定基準を明確化することが重要であることが分かってきた。可視化が難しかった「設定フロー」を看護師の経験値に基づいて作成したことで、コントロール術も共有できるようになってきた。今後はワーキング活動を通じて、患者目線からの良質な療養環境を検討していく。

新東京病院 看護師長 岩田 好恵 氏

新東京病院 看護師長 岩田 好恵 氏

医療関係者の意識を共有し、事故防止につないでいく

4年前から転倒転落防止の活動に関わっているのですが、年々、医療安全に対する社会の関心が高まるにつれて、みながこの問題に敏感になっているのを感じます。看護の現場では、センサーの設定をどうするかということから、ベッド柵の環境にいたるまでを話し合います。当院ではすべてのベッドが低床ですが、その柵を4つにすると乗り越える人が出てくるので3つにするほうがいいとか、このケースではサイドテーブルを押して転ぶ可能性があるので反対側に設置するかなど療養環境の細かなところまで検討します。離床CATCHが全床に入っているという恵まれた環境がありますので、あとはもっと使い方の工夫をしたいと考えています。若い患者さんでも手術後は一度はセンサーを付けさせていただく。転倒などのリスクがなければ外せばいいわけで、そういう意識をみなが共有することで、環境整備にもつながり、事故防止に役立てることができるでしょう。

新東京病院 医療安全管理者 増田 洋子 氏

患者さんの自立と転倒転落対策のバランスを考え、「安心で安楽な療養環境」の実現を目指す

私は、2020年度から医療安全管理室の勤務となり、「医療安全」という立場から、医療や看護に関わっています。「人生100年時代」と言われる現代、「患者さんのADLを下げない」こと、「患者さんのQOLを維持する」ことは、非常に重要な課題となっています。しかし看護師が転倒転落防止に意識を強く持ち過ぎることは、時に患者さんの活動能力や自由な権利を奪うことになり、安全意識と医療・看護倫理の間で現場の看護師は悩み、疲弊していきます。医療安全管理室の業務として、看護師からのインシデントレポートを読みながら改めて感じていることです。当院は、全床で離床CATCHが使用でき、積極的に転倒転落の予防に努めております。今回、離床CATCHのバージョンUPと共に、新たにスマートベッドシステムが導入されました。床頭台に設置されたベッドサイド端末や、スタッフステーションに設置されたステーション端末との連携が可能になったことで、離床CATCHの設定状況など、より患者さんそれぞれへの対策状況を把握することが容易になりました。これにより、患者さん自身の活動能力を活かした安全管理が行えることや「離床CATCHの無駄鳴り」を減らすことにつながり、看護師の業務負担軽減や「安心で安楽な療養環境」に繋がると期待しております。医療安全管理室として、各部署と協力し、離床CATCHの履歴分析や転倒転落アクシデントの分析に努め、現状の把握を行いたいと思います。そして、適切な予防策を導き出すこと、職員のマンパワーの調整や快適な療養環境づくり、看護師の業務負担軽減を目指します。

RoomT2 杉山より

RoomT2 杉山より

PDCAを回し、設定の標準化によって業務改善を図った好事例

転倒転落対策において、モノを整備できたからといって終わりではありません。新たな課題を再認識し改善につなげ、標準化して看護の質のバラツキを減らしていくことが医療の質の向上に役立ちます。設定の標準化によりアセスメント能力が向上し、全員が同じレベルで議論できるようになったのは良い事例だと思います。損傷発生率をゼロにしていけるよう、さらなる改善に期待しています。