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設立代表者
杉山良子

日本赤十字武蔵野短期大学看護学科卒業。武蔵野赤十字病院に看護師として勤務。神奈川県立看護教育大学校教育学科入学。1999年より武蔵野赤十字病院看護部門の看護安全委員会の委員長。NDP(日本における医療のTQM実証プロジェクト)に参加する病院メンバーとなり、同時にNDPの医療技術班メンバーとなって、NDP活動にかかわる。2013年4月より現職。

転倒転落事故による傷害0を目指して、
エビデンスと知見を広めていく。
その信念から、が誕生しました。

  • 多くの事故が1人のときに起こっています

    患者さんの転倒転落事故は、事故の3割弱を占めるほど数多く起こっていると言われています。しかもその内の約9割は、私たち看護師、医療関係者が不在のときに起こっているのです。もちろん各々の事故による身体的な影響度には幅があるのですが、数の報告では、そういった規模になります。

    例えば、この転倒転落事故といわゆる注射事故を比較しますと、いずれも発生件数が多いものですが、発生の機序が違います。注射の場合は医療関係者の介在したなかで起こりますが、転倒転落の場合は、私たちのケアが介在しないとき、患者さんが1人のときに起こるのです。私たちが連れて歩いているときに転ぶのではなくて、患者さんが、「自分は大丈夫」と思って、動いて、その結果として、滑ったり、つまづいたりして、ふらついて起こる。そのため、事故防止対策も、そのことを考えて行う必要があります。

  • RoomT2 は、医療安全管理者の交流する場を築きます

    一方で、転倒転落事故は、その実態がつかみにくいという課題があります。前述のように、ケアの介在しないところ、患者さん1人のときに起きる事故というのは、ケガをしたという結果は分かっても、どうしてそうなったのかという原因が見えにくい場合があります。つまり数字には現れないところに大事な部分があるのです。そのため、私たちRoomT2では、臨床現場で働く看護師さんたちが集まって、こういう状況で事故が起きた、こんなことをしたら事故防止になった、といった自分たちの経験を語り合って、自分たちが情報と知恵、知見を受け取る、そういう場にしたいと考えて活動を始めました。

    発生を防止する手だてを考えるには、まず、防止する意識の共有が大切ですし、何よりも患者さんの療養環境を良くしていくという目標が重要となります。その臨床の現場で働いている看護師さんたちが、いろいろ試行して、考えることによって、自分たちの施設の療養環境を良くしていただくこと。自分たちの職場にはどんな問題があり、どのように解決の糸口を見出していくのかという、目標を見定めて、そこに到達していくための方法論を考え出すということが貴重だと思います。

    看護師さんの交流する場から得られた情報を共有していくことで、療養環境をよくしていくこと。それがRoomT2の役割だと自認しています。

  • 事故防止につながるシステムアプローチ

    さらに、いま求められているのはシステムアプローチです。つまり事故防止につながる仕組みづくりです。患者さんの状況把握から、事故防止、あるいは事故時の対応にいたるまで、やるべきことが決まっている、そういう仕組みがないと、事故発生の絶対数は減っていかないでしょう。看護師さんの経験や力量は違っていても、一定水準の対応ができるということにならないと医療の質が担保されているということにはなりません。

    例えば、転倒転落を考えたときに、必ず課題になるのは「身体拘束」です。看護師さんの数が少なくて、夜中は1人1人をケアできないため、患者さんが1人で勝手に動かないように、あるいは転落しないように、そういう優しさからだとしても、やはり身体拘束は倫理的にマイナスです。そのため、人工呼吸器を付けているなどの特別な場合を除いては、身体拘束をしない方法を導入していく。そういったことも含めて、看護師さん、多くの医療関係の方々のお知恵もいただきながら、一緒に考えていきたいと思っています。