活動報告

RoomT2初のWebセミナーを福岡と広島で開催

Webセミナー

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、2020年12月6日(日)に福岡で、同月12日(土)には広島で、RoomT2としては初となるWebセミナーを開催しました。コロナ禍に加えて年末という多忙な時期ではありましたが、2つの地域合わせて計18病院から19名の方々にご参加いただきました。

  • 私たちが目指す良質な療養環境 RoomT2 設立代表 パラマウントベッド㈱主席研究員 杉山良子

    転倒転落対策の考え方

    転倒転落対策の考え方を右図のように階層的に表した場合、頂点がアウトカム:結果としての患者の健康状態、QOLであり、一番下はストラクチャー:物的・人的資源、です。そして階層の真ん中、プロセスに当たるのが医療従事者の態度や行動です。私たちは、このプロセスに重きを置きながら対策を検討することになります。

    パラマウントベッドセミナー
    転倒転落対策の「あるべき姿」

    私たちRoomT2は次の5点を転倒転落対策の「あるべき姿」として提唱しています。
    1. 転倒転落による傷害をゼロにする:特に頭部外傷や大腿骨/頸部骨折を防止する。
    2. 患者の尊厳を守る:過剰な抑制をなくす。
    3. ADLを維持し、自立を支援する:患者が自分の力でADLを行うことが大切。
    4. 患者・家族が納得し安心できる:どうしてこの処置が必要なのかなどを伝える。
    5. 組織としての効率性を高める:一定のルールを整え遂行していくことが重要。

    パラマウントベッド(株)技術開発本部長 森田伸介2
    取り組み方のポイント

    取り組み方としては、データ解析や要因分析を基本にして転倒転落の見方を変えてみること。そして転倒転落はゼロにはできないことを再認識し、組織全体で限りなくゼロに近づけるための取り組みに果敢に挑戦することが大切です。

  • 転倒転落を解決するためのリーダーシップ ㈱オーセンティックス 代表取締役 高田誠 氏

    パラマウントベッド(株)主席研究員 杉山良子1
    リーダーシップのプロセス

    まず「良くしたい」「しなければ」という強い思いがなければ始まりません。その気持ちがあったうえで情報を集め目標と戦略を考えます。成果を上げるためには「ひたすら頑張り続ける」のではなく「立ち止まって考える」ことが重要。できないと思わないで始めることが大事です。

    パラマウントベッド(株)主席研究員 杉山良子2
    問題を解決するプロセスとポイント

    問題を解決するプロセスは、①現状の把握と今までの活動の評価、②焦点を絞った目標の設定、③解決方法の情報収集と活動の計画化、④実行、という流れになります。
    ①では、インシデントを1件1件細かく分析し状況を的確に把握することがポイントです。②においては「やること」ではなく、「何を達成したいか」を明らかにしましょう。また、漠然とした表現ではなく、「〇〇まで減らす」「〇〇を〇〇まで減らす」と具体的に目標を絞っていきます。③は情報収集がキーワードです。今までやってきたことを繰り返しても同じ結果しか出ません。他院の成功例や企業のノウハウなど新しい情報を探すことが重要です。情報を集めれば、必ず問題解決のアイデアが見つかります。RoomT2は、まさにこの情報の共有や提供を目的とした活動ですので、皆さんもぜひ活用してください。

  • ワークショップ:「成果を上げる計画立案プロセス」に記入してみよう

    高田氏の講義をふまえて、参加者がそれぞれ「成果を上げる計画立案プロセス」のシートに実際に記入。参加者数名の方から、シート記載内容を全員に共有していただくとともに、高田氏からコメントやアドバイスをいただきました。その中から、主な内容をご紹介します。また、参加者からの質疑応答の時間も設けられました。

    成果を上げる計画立案プロセスセミナーの様子
    現在の状態 目指す状態 高田氏コメント

    入院当日の転倒転落のリスクアセスメントが不十分で対策が十分できておらず、ベッドサイドでの転倒転落が発生している。

    入院時のアセスメントを十分に行い、患者のリスクに合わせた対策を取り、ベッドサイドでの転倒転落をゼロにする。

    目標をベッドサイドに絞ったところ、がとても良いです。

    離床センサーを昼夜同じ設定で使用し、夜間転倒することがある。
    アセスメントにばらつきがあるため、正しい転倒転落防止の対策ができていない。

    患者アセスメントが正しくでき、離床センサーの設定を適切に行える。

    転倒転落全体の中で、この目標を達成すると、どのぐらいの問題が解決できるのか。その辺りを明確にできると、より良くなります。

    トイレ移動の時によく転倒する。
    状況を把握できておらず未然の対策が取れていない。

    転倒転落に対し、全員が未然に対策できる。

    起こっている問題をいかになくすかを目標にし、そのために全員がどのような力をつける必要があるかというアプローチにすると成果につながります。

    ①高齢者・認知症の患者が多く、骨折に至るケースがある。
    ②インシデントレポートには発生時の患者の状況を記入するようにし、場面を把握するようにしている。

    ①有害事象をゼロにする。
    ②患者にあったトイレ誘導ができる。

    「〇〇ができるようにする」という目標の場合、それができたからといって必ずしも問題が解決するとは限りません。
    ②の「行動目標」だけでなく、①の「具体的に無くしたいこと」があることが大事です。

    センサーベッドを使用しているにも関わらず、3b以上の事故が起こっている。

    センサーベッド使用時の3b以上の転倒転落をなくす。

    具体的で良いですね。パラマウントベッドが、ノウハウを持っていると思います。ぜひ参考にしてください。

  • 質疑応答

    Q. 転倒転落ラウンドのやり方や効果を教えてください。

    A. 多職種で構成することが基本です。転倒転落は全体のものですので、ドクター、PT、看護師、薬剤師などが集まって月に1回でもラウンドができるような体制を作っていただくといいでしょう。どの人をラウンドするかは安全管理者が中心になって取り組んではどうでしょうか。

    大切なのは、ラウンドしていることが全スタッフに見えるようにしておくことです。「ラウンドで私の困りごとを聞いてみよう」と思える風潮を生みだし、お互いに専門職としての意見を交換しながら全体を引き上げていくラウンドが望ましいですね。(杉山)