活動報告

HOSPEX JAPAN 2019にて、東京都看護協会と共催でセミナーを開催しました

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転倒転落事故(有害事象)の低減に向けて物的対策を考える

2019年11月20日、東京ビッグサイトで開催されたHOSPEX JAPAN 2019にて、東京都看護協会との共催で看護セミナーを開催しました。タイトルは『転倒転落事故(有害事象)の低減に向けて物的対策を考える』。事前応募された来場者100名以上が参加し、ワークショップを含め約3時間にわたるセミナーで見聞を深めました。

  • 物的対策に着目する時代 RoomT2 設立代表 パラマウントベッド(株)主席研究員 杉山良子

    パラマウントベッド(株)主席研究員 杉山良子1
    転倒転落防止対策の4つのステップ

    転倒転落防止対策には、①転倒転落の危険性が高い人をより徹底して見極める、②危険行動を未然に防ぐ、③行動を起こしても転倒転落しないよう患者行動を事前に察知する、④転倒転落してもケガの影響度を最小限にする、という4つのステップがあります。このうち①はアセスメント、②~④が低床ベッドや離床CATCH、介助バー、眠りSCANなどの物的対策となります。

    パラマウントベッド(株)主席研究員 杉山良子2
    物的対策のポイントと考え方

    物的対策を進めるうえで大切なのは、アセスメント結果に応じて「その患者に最も適切なモノは何か」を選択する力をつけていくことです。また、物的対策に並んでKYT:危険予知トレーニングも転倒転落防止には、とても役立ちます。看護職の人数が限られた現状の中で、できるだけ患者を抑制せずに有害事象を減らすためには、物的対策に着目して考えなければならない時代です。「転んでも大怪我につながらない」のような気持ちで、積極的に物的対策に取り組んでいってください。

  • 転倒転落事故低減のための療養環境 パラマウントベッド(株)技術開発本部長 森田伸介

    ベッド周りの転倒転落対策の3つの軸

    療養環境づくりとして当社は、「転倒転落しても事故になりにくい:低床ベッド、衝撃緩衝用マットなど」、「リスク認知性を向上させる:表示や警告、足元灯など」、「リスクの通報と予知:眠りSCANや離床CATCH」の3つの軸で考えています。なかでも、眠りSCANと離床CATCHについては厚生労働省の導入実証実験他で明らかな改善結果が得られています。その一方で望んだ結果が得られなかった事例もありますが、原因のひとつに「難しそう、面倒」といった最新機器に対する現場の先入観があるようです。

    パラマウントベッド(株)技術開発本部長 森田伸介1
    KYTの「5S」を活用した安全対策

    我々製造業では安全対策としてKYTの「5S:整理、整頓、清掃、清潔、躾」を最も重視しています。整理とは必要と不必要を仕分けること、整頓とは必要なものを整理して皆が分かりやすくすること、清掃、清潔は汚れを取り除ききれいな状態にすること、躾は決められたことを守ることです。いつもと違う状態は異常を示し、そこに危険が潜んでいることを意味します。危険の芽をいち早く摘み取るうえで役立つキーワードです。参考にしてください。

    パラマウントベッド(株)技術開発本部長 森田伸介2
  • ワークショップ 展示会場で転倒転落防止に寄与できる「モノ」を見つけよう

    テーブルごとに14のグループに分かれてHOSPEX会場内を周り、転倒転落防止につながりそうなモノを探索。各出展企業の方々にも話を聞きながら、「これは」と思った製品のパンフレットやスナップ写真を持ち帰りました。 選定されたモノは、ベッドセンサーに留まることなく、床材などの設備環境に関するモノや、転びにくい体づくりに繋がるモノなど、様々な分野におよびました。

    展示会場イメージ
  • 見つけた「モノ」と選定理由

    • ●倒れにくいコップ:コップが倒れ、こぼれた液体に気が付かずに滑って転倒する患者がいる
    • ●骨格筋量の計測機器:大腿部の骨格筋量を計測できリスクアセスメントに寄与する
    • ●車椅子の座位保持マット:滑り落ちて転倒するのを防ぐことができる
    • ●自動的に尿を測定できる機器:採尿カップを持っていたことで起こる転倒を軽減できる
    • ●筋力をアップする機械:患者自身の身体を整えていくことができる
    • ●床を畳程度の柔らかさにする緩衝材:転落転倒しても怪我を防ぐことができる
    パラマウントベッド(株)技術開発本部長 森田伸介2
  • 杉山氏総括

    展示会場を見渡してみると役に立つモノがたくさんありますが、私たち看護職の側がそのことに気づいていないという部分もあるのではないでしょうか。これからは、様々な工夫をするための「気づき」の姿勢も養っていきたいものです。技術の進化で、対策に寄与するものが次々と開発されています。療養環境は診療報酬に加算されないため先送りされがちですが、私たちは患者を中心に考えたケアを創造的に行なえる時代に生きています。職場風土の古い概念を捨てて、新しいものにどんどん挑戦してください。

    パラマウントベッド(株)技術開発本部長 森田伸介2